ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
経営のためのIT

IoTとシェアリングエコノミーが
同時に急拡大するのは、偶然ではない

内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]
【第62回】 2016年11月11日
著者・コラム紹介バックナンバー
previous page
3
nextpage

IoTが果たす役割

 IoTは、あらゆるモノがインターネットにつながることを意味するが、その本質は物理的な具象や現象をデジタルデータ化して捕捉することができ、さらにそうして得たデータを分析するなどしてヒトやモノにフィードバックできることにある。また、製品のスマート化を促進し、物理的なモノを仮想的に制御したり運転したりすることを可能とする(本連載第60回「IoTによるモノ売りモデルからの脱却は4つのパターンに分けられる」)。

 すなわち、地理的制約や物理的限界を取り払うことで、圧倒的なコスト削減や手間を取られていた作業の大幅な排除を実現することができる。自動車、家電、生産機械などの製造においては、製品の機能や性能をソフトウェアで制御できるため、複数のモデルを生産することなく顧客に選択肢を提供できるようになる。また、遠隔で稼働状況のモニタリング、点検、保守、自己修復などが可能となるため、製品寿命の延命がもたらされる。収集されたデータを分析することで、省エネルギーやリサイクルにも寄与し、大量生産大量消費のモデルからの脱却による循環型社会への移行を促進する。

シェアリングエコノミーが
果たす役割

 一方、現時点においてシェアリングエコノミーといえば、自動車や駐車場などを使っていない時に貸すビジネスという狭い意味で捉えられている傾向がある。UberやAirbnbに代表されるような、主にC2C(消費者間)でのモノの共有をマッチングする事業を想起させる。しかし、モノに限定せず資金(クラウドファンディングなど)、人材やスキル(クラウドソーシングなど)の共有も考えられ、B2B(企業間)やB2Cでの利用も含めるとその領域は幅広い。IT業界におけるパブリッククラウドやオンラインストレージなどのサービスもシェアリングエコノミーの一種といえる。いずれにしても、利用者は、全ての資源を自前で準備したり保有したりせず、エコシステムに集められた資源を(あるいはその都度集めて)必要な時に必要な分だけ使う。

 シェアリングエコノミーが進めば、私有財産や個別企業が保有する財産の多くは、エコシステムの共有財産となり社会資本化していく。これにより、モノの全体的な生産量は減少することとなる。ミシガン大学のLawrence Burns教授は「うまく調整されたカーシェアリングが実現できれば、個人所有の車の2割程度の台数で同レベルの移動性を提供できる」としている。組織および個人が事業を行うにあたっての初期投資と、事業を維持運営するうえでの経営資源の総保有コストは全体的に低減する。

previous page
3
nextpage
IT&ビジネス
クチコミ・コメント

facebookもチェック

内山悟志
[ITR会長/エグゼクティブ・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。2019年2月より現職。


経営のためのIT

日々進化するIT技術をどうやって経営にいかしていくか。この課題を、独立系ITアナリストが事例を交えて再検証する。クラウド、セキュリティ、仮想化、ビッグデータ、デジタルマーケティング、グローバル業務基盤…。毎回テーマを決め、技術視点でなく経営者の視点で解き明かす。

「経営のためのIT」

⇒バックナンバー一覧