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一生を賭ける仕事の見つけ方
【第13回】 2016年11月25日
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斎藤祐馬

「たとえどん底にいても、優しさという強さを」
「One JAPAN」を生んだ男の熱量は、どこから来るのか?
One Panasonic Founder 濱松誠×斎藤祐馬 原体験対談

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パナソニック内に部門を超えた「縦・横・斜めのつながり」をつくり、人材を活性化して注目を集めた「One Panasonic」、そして2016年9月に大企業約30社の若手有志をつなぐ「One JAPAN」を立ち上げ、NHKはじめメディアからも注目を集めている濱松誠氏。従業員数約25万人の巨大企業に所属しながら、次々とイノベーターの「卵」が生まれるしくみを回す濱松氏の原体験には何があり、今後何を目指していくのか――。
同じく大企業トーマツに所属しながら、ベンチャー支援を行う企業内起業家・斎藤祐馬氏が、著書『一生を賭ける仕事の見つけ方』で大好評のノウハウ「感情曲線」をもとに、斎藤氏の「熱量」の源泉に迫る。

25万人の大企業で「人」をつなげるハブになりたい
――注目を集める「One Panasonic」の原点

斎藤 ご存知ない方もいらっしゃると思うので、改めて「One Panasonic」についてお聞きしたいのですが、まずは濱松さんとはどんな人で、なぜOne Panasonicを立ち上げようと思ったのかを教えてください。

図1)「感情曲線」とその描き方
(『一生を賭ける仕事の見つけ方』49ページより)
<拡大画像を表示する>

濱松 2006年にパナソニックに入社してから6年半の間は、海外コンシューマー営業(北米TV事業)やインド事業推進に従事しました。もちろん、グローバルの消費者向けに市販の製品を売ることで人を幸せにすることはできると感じていましたが、それ以上に「人」に対する興味が強くなっていきました。ちょうど社内公募のチャンスが訪れたことから、本社の人事部門に異動しました。

 ご承知のように、パナソニックという企業は松下幸之助が創業してから、間もなく100年が経過します。グループ連結売り上げが約7.5兆円、従業員数も約25万人の巨大企業です。これはパナソニックに限ったことではありませんが、あまりにも大きく、あまりにも複雑すぎて、人と人のつながりが希薄になっていると感じていました。僕が「One Panasonic」を立ち上げた時期は、人に興味を持ち、人事部門に移るタイミングと偶然にもほぼ重なっています。

斎藤 複雑で巨大な企業で、One Panasonic は何をやろうとしているのですか?

濱松 私たちがやろうとしていることは、4年半前の設立時から変わっていなくて、組織を越えて個人をつなげる、ということです。何のためにやるかというと、2点あります。

 1つ目は「一歩踏み出す個人をつくる」。たとえば、優秀な5、6年目の若手社員と新入社員が会う機会をつくる。ロールモデルがいれば、それを見た新入社員がやる気になる。社内のパワーバランスを目の当たりにして志や情熱を失いかけていた中堅社員が、もう少しがんばってみようと思う。ロールモデルに出会ったことで、新しい部署に自ら異動してチャレンジしようと思う。自分のマインドセットやスキルセットが足りないと感じ、国内外のビジネススクールに行く。社内外の新規事業のプログラムやハッカソンに自発的に挑戦する。外から見たら「何が変わったの?」と言われるような話ですが、大企業に所属する個人から見れば、これはかなり大きな話だと思っています。

 個人の出会いをつくる一方で、組織を超えたイノベーション、パナソニック流でいえば「クロスバリューイノベーション」を実現して成果をあげることも重要な柱で、これが2つ目になります。たとえばトーマスベンチャーサポートの斎藤祐馬さんとパナソニックの役員をつなげ、オープンイノベーションによって面白い事業を生み出す。私たちは勝手に「スーパーサイヤ人」と呼んだりしているのですが、影響力のある人たち同士を意図的につなげることで、イノベーションが起こる確率も高まる。これは社外に限らず、社内の個人をつなげることでも成果が生まれると思っています。

斎藤 なるほど。そもそもOne Panasonicを立ち上げようと思った濱松さんのモチベーションはどこにあったのですか?

濱松 もともと、僕が内定者だったときに先輩とのつながりが思っていたよりも少なく、社内の情報が入ってこないことが悔しかったんです。そこで、自分が新入社員として入社したころから内定者と社員の飲み会を企画しました。さらに、若手で飲む機会を年に数回つくり、ちょっとした勉強会のようなものを開いていました。それを6、7年重ねていくうちに「若手ネットワーク」とか「濱松軍団(笑)」というような400人に及ぶ若手のネットワークができていたのです。そんなとき、パナソニックとパナソニック電工、そして三洋電機の3社が統合するという話が持ち上がりました。僕は3社の若手がつながるチャンスだと考えました。実質的には、そこからOne Panasonicというコンセプトが動きはじめたのです。

One Panasonic でつくりたかったのは、「社内の人脈はあいつらに聞けばつながれる」という「ハブ」機能です。One Panasonicが社内の組織の架け橋となり、One Panasonic に行けば何とかなるという共通認識を社内に知らしめたかったのです。大企業の強みは人材、技術、ブランド、歴史、お金、信頼といった「有形無形の資産」を豊富に持っていることです。大企業の若手の多くは、これに気づいていない人が多いのではないかと思います。

 大企業が多くのリソースを持っていることを若手・中堅が感じにくいのはなぜか。いろいろな理由があると思いますが、その1つは、「組織が縦割りで、社内の個人個人がつながっていないから」です。もちろん全世界の25万人、国内の10万人をすべてつなげるのは無理な話ですが、外資系企業やベンチャーでもない25万人の巨大企業にはそういうことができない、という「バイアス」を壊したいんです。そしてその感覚を定着させるために、マインドセットやスキルセットを変えていかなければなりません。そこが変わらないと、何も変わらないからです。視野を広げ、視座を高め、1人で変えようとしても現実は厳しいので、仲間を巻き込んでいくことも必要です。

 ただし、コミュニティのハブになるといっても、One Panasonic が真ん中にいる必要はありませんし、主役である必要もありません。私たちの価値は、個人をやる気にさせる(モチベーター)、個人と個人をつなげる(コネクター)、新しいことを実践する(イノベーター)、世の中へ広めていく(インフルエンサー)にあると思っています。

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斎藤祐馬[さいとう・ゆうま]

トーマツベンチャーサポート株式会社 事業統括本部長。公認会計士。
1983年生まれ。中学生のとき、脱サラして起業した父親が事業を軌道に乗せるのに苦労している姿を見て、「事業を立ち上げたばかりの起業家を支援する人がいればいいのに」と何度も思い、やがてベンチャーの「参謀」を志す。
2006年、4度目の挑戦で公認会計士試験に合格し、監査法人トーマツ(現・有限責任監査法人トーマツ)入社。会計監査やIPO支援業務に携わるものの、スタートアップ期のベンチャーへの支援ができないものかと悩み、単独でベンチャー支援を始める。
2010年、トーマツ内で休眠していたトーマツベンチャーサポート株式会社(略称TVS)の再立ち上げに参画する。従来の公認会計士の枠には収まらない「ベンチャー支援」という活動に対して当初は理解を得られず、社内からは逆風も吹くが、一つひとつ壁を越え、社内外に仲間を増やし、大きく成長するに至った。現在は、「挑戦する人とともに未来をひらく」というビジョンのもと、国内外で奮闘する100名以上のメンバーとともに、ベンチャーだけではなく、大企業、海外企業、政府、自治体などとも協働し、自らのミッションを生きる日々を送っている。自らの思いを「一生を賭ける仕事」につなげたその経験には、大学、企業、自治体などから講演の依頼が絶えない。
2013年4月より、現在は「起業家の登竜門」と呼ばれるようになった「モーニングピッチ」を仲間とともにスタート。これまでに700を超えるベンチャーの登壇を実現したモーニングピッチは、大企業やベンチャーキャピタル、メディアとの出会いの場をベンチャーに提供する、日本有数のプラットフォームとなっている。


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