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トランプ氏はワシントン変えるか、主要政策とその実現可能性

2016年11月10日

[ワシントン 9日 ロイター] - 「ワシントンを変える」を旗印に米大統領選を制した共和党のドナルド・トランプ氏は移民や通商政策の改革に向け強い意欲を示している。

ただ実現には議会の協力が必要だ。トランプ氏はそもそも議会指導部との関係が良いとは言えず、共和党主流派と思想的な食い違いも指摘されており、「蜜月」後の議会共和党との関係には不透明感が残る。

以下、トランプ氏が掲げる政策と、その実現可能性をまとめた。

<通商>

トランプ氏は選挙戦では、国際的な通商協定は米国の労働者並びに競争力を損ねた、との主張を展開した。中国に対しては「強い姿勢で」臨むと約束したほか、環太平洋連携協定(TPP)からの離脱、および北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉、もしくは撤廃を表明した。

トランプ氏は米大統領として、中国など外国からの輸入品への関税について、税率を引き上げる一定の権限を持つことになる。また議会が批准したとしても、トランプ氏はTPPを先延ばしすることも可能だ。

エコノミストは、こうした措置がとられた場合、米消費者にとって物価が大幅に上昇、経済にマイナスになりかねないと警告。米国の輸出にも打撃になる可能性があると見ている。

<移民>

トランプ氏は、メキシコとの国境沿いに壁を建設すると約束。不法移民を送還し、「テロに屈した」国からの移民を禁止すると表明した。

こうした政策の実行には、多額の資金が必要と見られる。トランプ氏は、壁建設のコストは80億─120億ドル、との試算を示しているが、コストが同氏の推定を大幅に上回る可能性を指摘する向きも多い。

政界では、不法移民を全員送還し、国境に壁を築くのに、少なくとも1660億ドルが必要と試算されている。議会共和党の多くは、こうした政策を支持しているが、多額のコストにはたじろぐ可能性がある。

トランプ氏は、メキシコに壁建設費用を負担させるとしているが、米大統領といえども外国に無理やり費用を出させる権限はない。

より広範囲な移民政策としては、全体の移民の数を減らし、海外からの熟練労働者の受け入れを抑制する方向に動く可能性がある。そうなれば、移民法緩和を求めてきた経済界やヒスパニックには打撃となる。

<ヘルスケア>

医療保険制度改革法(オバマケア)を撤回し、代わりにメディケイド(低所得者・障害者向け公的医療保険)の運営で各州の裁量を拡大することを主張している。州をまたいだ保険販売も容認するとしている。

トランプ氏は議会の協力を得る必要があるが、上院で法案廃止に必要な60票の賛成票を共和党が確保するのは困難とみられる。また仮に数百万人に保険を提供した法律を廃止すれば、共和党は厳しい批判を受けかねない。

ただ、オバマケアの成功を目指さない人物を担当者に起用するなど、トランプ氏には制度を弱める方法がいくつもある。

<税と歳出>

大幅な減税を約束する一方で、歳出の3分の1以上を占める医療・年金プログラムは維持する方針を示している。この組み合わせは財政赤字の急増につながる恐れがある。

インフラと国防予算を増やすが、医療と年金以外の支出は毎年1%削減することを提唱している。

これまでに税率を引き下げることや税制の抜け穴をふさぐことを目指してきた議会共和党から大きな支援が期待できる。だが、現在税制の優遇措置を受けている住宅保有者や企業などから強い抵抗を受けるだろう。

国民の支持が厚い給付プログラムを維持すると約束しているが、財政悪化を懸念する保守派議員が反発する公算が大きい。

<金融規制>

金融危機後の2010年に成立した米金融規制改革法(ドッド・フランク法)を「解体する」と約束しているが、詳細は明らかにしていない。

共和党は公約で金融機関の商業銀行業務と証券業務の兼営を禁じた1930年代のグラス・スティーガル法の復活を掲げている。トランプ氏の選挙対策本部長を務めていたポール・マナフォート氏はこれを支持する考えを示していた。

ただ、共和党議員の多くはグラス・スティーガル法の復活に反対している。

<イスラム国>

トランプ氏は過激派組織「イスラム国」(IS)との戦いに関する計画の詳細を明らかにしていないが、これまでにISを「打ち負かす」と述べている。

敵に戦略が露呈しないよう詳細は機密にする構え。

トランプ氏は大統領選に勝利した場合、来年1月20日の就任から30日以内に軍司令官に独自の計画を示すよう求めると述べていた。

シリアからの難民受け入れは拒否。代わりにシリア国内に難民のための「安全地帯」を設置し、資金は湾岸諸国に拠出させる方針。

ただオバマ大統領は、シリアでの安全地帯設置には米軍の大きな関与が必要となると指摘。長期化したイラク・アフガニスタン戦争にうんざりした国民には不人気な政策となる可能性がある。

<ロシア>

 「非常に良好な」関係を築くと表明し、IS対策でロシアと協力する可能性にも言及している。

2014年にウクライナから編入されたクリミアをロシアの領土と認め、西側諸国が科した制裁の解除を検討する方針も示した。

米国の一部同盟国が防衛の義務を果たしていないとして北大西洋条約機構(NATO)を批判。7月には、ロシアがNATO加盟国を攻撃した場合、その国が義務を果たしている場合のみ防衛すると述べている。

一方NATOは、対ロシア制裁が、ウクライナで親ロシア派を支援するロシアに行動を改めさせる鍵になるとしている。またNATOは長年にわたって国際テロ対策に注力してきたと強調している。

<最高裁判所>

最高裁判事のポストは現在1つ空席となっており、トランプ氏の任期4年の間にさらに空席が出る見通し。同氏は保守派の判事を指名し、リベラル派と保守派が4人ずつできっ抗する現在の最高裁を保守派に傾けるチャンスを得る。

トランプ氏の候補者リストは、一部の保守系活動家や共和党上院議員らから評価されている。

*情報を追加、見出しを修正しました。

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