2011年の景気は上々でも
企業業績は簡単に好転しない

「今年の特に上期は、景気が良いと思いますよ。」

 大手企業トップの方々が、マイクを向けられて語ったメッセージからは、全般的に前向きな雰囲気が伝わってきたといってよいのではないでしょうか。

 昨年1月頃は、「もっと円高が進んで、輸出型の企業は厳しい状況になる」、「それにともなって、日経平均はまだまだ下がる」といった論調が多かったように思います。どうやらそうした悲観論も一息ついた状況のようです。

 事実、ギリシャの財政破綻危機に端を発したユーロ圏債務危機も、今年に入ってポルトガル、スペイン、イタリアの国債入札が順調に推移していることで、危機拡大の懸念が後退しています。また、アメリカが内需拡大のために減税法案を成立させたことなどが、日本経済にとって良い材料になっていると思います。

 ただし、前々回のレポートでも取り上げたように、景気が良ければ自分の会社の業績も好転するという図式が必ずしも成立するとは限らない、というのが昨今の大きな特徴でもあります。

 かつての経営環境では、「企業はトップで99%決まる!」と言われてきました。高度経済成長下の日本でも、松下幸之助、本田宗一郎といった後世に名を残す経営者が生まれています。

 しかし、現在では「トップが戦略を示し、それを現場が忠実に実行する」だけではなかなか成果につながらないのが状況です。トップの戦略は、必要条件ではあるけれども、十分条件足り得ない状況になった、ということではないでしょうか。

 最近、経営課題として、「組織間のコミュニケーション」や「現場の実行力」といったキーワードが目立ちはじめているのには、そうしたことが背景にあると思われます。

 今回は、そのなかでも、経営課題の根っこにある社員の“モチベーション”について考えてみたいと思います。