異なる分野の人とのコラボレーションは、手順一つにも手間がかかるが、歯車が噛み合うと、思いもよらないような力を発揮する。チームの力を最大化するスキルがいまこそ求められている。

異なるジャンルの人が集まる価値とは

 組織やチームで仕事をしていると、ときどき「面倒くさい」と思うことがあります。いちいち、報告しなければいけない。自分で決めたことを説明し納得してもらわなければいけない。異なる意見が出たり、自分の意見を理解してもらえないとイライラすることもあります。自分ひとりだったら、好き勝手に決めて、すぐに動けるのにと、正直、企業で働きながら思ったことがあります。

 一方で、チームの力を実感したことも何度もあります。いまDHBRでは、「リーダーは『描く』」という連載があります。これは、主に経営者の方々に実際に絵を描いていただき、自分の仕事観を絵で表現してもらうという企画です。この「描く」というプログラムは、元々コンサルティング会社のシグマクシスと、アート事業の会社ホワイトシップが共同で開発したものです。そのため、この取材では、両社に協力していただき、コンサルタント、ワークショップファシリテーター、アーティスト、さらにカメラマンとライター、それに編集者がチームを組んで取材しています。まさに、編集部が全員参加しても到底実現しえないユニークな記事が、異なるプロフェッショナルによるチームの力によって実現しています。

 この企画は当初、関係者が多くどうなるかと不安もありましたが、目標を共有できたら、多様なメンバーの力が思いもよらないような力を能動的に発揮することを学びました。いまやDHBRの代表的な連載の一つとなっています。

 そもそも組織に属するか否かに関わらず、仕事は一人では完結しません。アーティストもそれを表現する場や、売る人がいないと仕事として成立しない。カメラマンやイラストレーターも依頼主とのコミュニケーションにより、よりよい作品を生み出しています。私のような編集者などは、いわば「人に仕事をお願いする仕事」であり、一人では何も生みだせないのです。

 さらに今の時代、仕事の領域がますます細分化されています。エンジニアという言葉一つも、ウェブ系なのか基幹システムなのか。あるいはミドルウェアなのか、データベースなのかで、求められる場面は異なります。また、デジタル技術と化学薬品が融合したり、ソフトウェアとネットワーク技術の融合のように、分野横断的な価値のつくり方が大多数を占めるようになりました。IoTは、ネットワーク、センサー、アルゴリズム、アナリティクス、それに素材やハードウェアなどすべてが融合されて実現する技術です。マーケティング担当者が、素材開発者と協働する、データアナリストがデザイナーとプロジェクトを組むなど、専門用語も価値基準も異なる人と一緒に働く技術が必要となります。

 今号のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビューは、「チームの力」を特集しました。多様なスキルを持つメンバーの力を高めるリーダーのスキルでもあります。自分の力より、人の力を引き出すほうが成果は大きい。そして、複数の異なる人の力を結集させることができれば、さらに大きな成果が生み出せる。そのために必要なスキルやマインドは何かを、本誌を通して考えてもらえれば幸いです。(編集長・岩佐文夫)