菅第二次改造内閣が発足したが、政権浮揚は果たせず、国会審議は波乱含みだ。小林良彰・慶応義塾大学教授は、公明、自民両党との連立構想がままならず、予算関連法案が参議院で成立しないまま菅政権は息詰まり、6月頃に向けて総選挙に突入すると読む。その時、国民はいずれを支持するのか。1月7~10日に行われた慶応大学による世論調査をもとに、小林教授が読み解く。

浮上する「6月総選挙」のシナリオ<br />世論調査から見える菅民主党勝敗の分水嶺<br />~小林良彰・慶応大学教授に聞くこばやし・よしあき/慶應義塾大学法学部教授。専門は政治学・政治過程論。1954 年、東京都出身。慶應義塾大学法学部政治学科、同大学院法学研究科修士・博士課程修了(政治学)、法学博士。慶應義塾大学専任講師、助教授を経て1991年より現職。精緻なデータ解析による選挙分析や政治問題へのコメントで有名だが、全国各地へのフィールドワークを重ねるなど、自治体の現状と問題点についても知悉している。『現代日本の政治過程』『選挙制度』『公共選択』など著書、編著多数。

――菅第二次改造内閣の顔ぶれから読み取れるものは何か。

 ポイントは二つある。第一に、反小沢を鮮明にしている安住淳氏を国対委員長に起用すると同時に、菅グループの江田五月氏を法務大臣に任命したことで、小沢一郎氏に対して強硬姿勢を貫くことが示された。

 第二に、経済産業相を環太平洋経済協力協定(TPP)参加に慎重だった大畠章宏氏から海江田万里氏に交代させたのは、TPPを最も重要なアジェンダ(議題)として政権を浮揚させるという菅首相の意思の表れだ。ただし、所轄の大臣ながらTPPに慎重な鹿野道彦氏を農林水産相に留任させたことで、菅首相にどこまでの覚悟があるのかがまだわからない。

――小沢氏に対して強硬姿勢を貫くというのは、離党を勧告するということか。

 強制起訴されても小沢氏がなお自身で決断しない場合には、離党勧告もあると菅首相は考えているだろう。

――小沢氏の政治生命はついに終わりか。

  終わるのか復活するのかは、この政権の行方次第だ。

――菅首相はなぜ、TPPに賛成と反対の両論者を閣内に置いたのか。

 とりあえず経産相を積極派に替えれば、TPP参加に向かって具体的な調査、検討は進む。農水相が立ちはだかるのは、参加するかしないか議論する次の段階だ。だから、先ほど「TPPをアジェンダとして」という表現を使ったのだ。

――与謝野馨・経済財政担当相は野党の自民党や公明党とのパイプ役を期待されているが。

 パイプ役にはなりえない。与謝野氏は2009年の政権交代選挙において自民党から立候補し、同じ選挙区で民主党の海江田氏に敗れ、比例代表で復活した。その自民党からは、「たちあがれ日本」を結党した際に除名されている。その人物が大連立構想の橋渡しができるかもしれないなどと考えるのは、楽観的に過ぎる。