前回コラムは電機メーカー5社の決算データを利用して、為替レートに関する2つの特異点問題を提示した。「為替レート限界点」と「為替レート最適点」である。

 その概要を示すと〔図表 1〕の通りであった。ソニー、富士通、NECを加えたものについては、次回コラムで紹介する。

自動車産業からニッポン経済に至るまで<br />輸出立国を維持できる「円高限界点」はいくらか

 〔図表 1〕にある「為替レート限界点(円高限界点)」と「為替レート最適点」の定義は、次の〔図表 2〕による。

自動車産業からニッポン経済に至るまで<br />輸出立国を維持できる「円高限界点」はいくらか

 今回はニッポン経済の代表である自動車業界の決算データを用いて、〔図表 2〕にある各点を求めてみる。さらには、「ニッポン経済」というマクロ経済レベルの「為替レート限界点」も求めてみよう、という大胆な試みも行なう。

フィクション仕立ての議論では
円高問題はいつまでも解決しない

 マクロ経済に関しては、国の統計に始まり、マスメディアやシンクタンクによる分析から、経済学者や個人のブログにいたるまで、様々な議論が展開されている。残念ながらそれらの多くは、「マンキュー経済学」や「スティグリッツ経済学」などで読んだことのある話ばかり。また、2011年になってもいまだ円高の勢いが止まらず、減収減益で苦しんでいる企業が多い中で、フィクション仕立てで解決策を探るものばかりだ。

 フィクションは啓蒙に役立つが、自分にとって都合のいい答えを見つける恐さがあることを忘れてはならない。筆者自身、かつて、ダイヤモンド社の経済小説大賞で最終選考まで残ったものの、あと一歩及ばず、フィクションには億劫になってしまった、という事情もあるかもしれない。