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焦点:新興国を揺さぶる「代行利上げ」、最終局面はドル安か

2016年11月17日

[東京 17日 ロイター] - トランプ次期米大統領の公約が金融市場のインフレ予想を刺激し、米金利上昇とドル高が大幅に進んでいる。金利高/ドル高は市場による「代行利上げ」であり、新興国市場を揺さぶる構図ができつつある。米国が12月に政策金利を引き上げれば、その圧力が一段と増す。

今後は、レーガン時代の「双子の赤字」問題が深刻化し、最終的には金利高/ドル安に帰結するシナリオも現実味を帯びつつある。

<米利上げでリスク増大>

米金利上昇の要因について、BNYメロンのグローバル市場ストラテジスト、サマルジット・シャンカル氏は「トランプ政権のインフラ投資拡大によって国債の発行が拡大するほか、インフレ圧力が高まるというのが、選挙後のコンセンサス」との見方を示す。

米10年国債利回り<US10YT=RR>は14日、2.3%台に乗せ11カ月ぶりの高水準となり、米2年国債利回り<US2YT=RR>は16日、1.03%と10カ月ぶりの高さに達した。

米長期金利の上昇は、既に4カ月ぶり高水準に達している米住宅ローン金利を押し上げるほか、値引き後も低迷する米自動車需要の下押し圧力ともなる。

市場の「代行利上げ」に、米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策金利引き上げが重なれば、利上げのダメ押しとなり、不安定化する新興国経済のリスクを高めると、市場の専門家は口をそろえる。

リーマンショック後の米量的緩和で、あふれ出したマネーは、中国、ブラジル、アフリカなど高成長の新興国・資源国へと流入した。

しかし、2014年半ばからのドル相場の急騰は、いったん新興国に流入したマネーが米国に向けて再還流している「証拠」との見方が多い。

 「新興国から流出した資金が米国に向かっていることで、新興国市場は株式、債券、通貨が総じて軟調。ドル建て債務の返済負担は、足元のドル高と金利高で、新興国に一段と重くのしかかっている」と三菱UFJリサーチ&コンサルティング・主席研究員の廉了氏は指摘。「米国が利上げすれば、債務借り換えの安定性が損なわれ、新興国のリスクを助長しかねない」と警鐘を発している。

国際決済銀行(BIS)の試算によると、米国以外の企業が抱えるドル建て債務は、2014年9月時点で9.2兆ドル。そのうち3.3兆ドルが新興国企業だ。1.1兆ドルは中国に拠点を持つ企業、3000億ドル超はブラジルの企業となっている。

<「双子の赤字」、ドル売り圧力に変化へ>

トランプ新政権下で膨らむ見込みの双子の赤字の影響について、国際金融情報センター理事長の加藤隆俊氏は「双子の赤字の拡大は、米金利上昇とドル資産需要の高まりにより、当初はドル相場の上昇を招く」と分析している。

しかし、ドル高は「米国にとって負担増となるため、1980年代半ばには、ドル高是正を目的とするプラザ合意に至った」と指摘する。

今回は「当時に比べて、マーケットが大きくなり過ぎたこともあり、主要国の金融当局が特定の目標水準を設定して、協調介入してドルを押し下げるという方向にはならないだろう」と、加藤氏は展望する。

主要6通貨に対するICEフューチャーズのドル指数<.DXY>は16日、一時100.57まで上昇し、13年7カ月ぶり高水準を付けた。

2014年半ばからは既に27.5%上昇している。

FRBのブレイナード理事は、今年9月に「20%のドル高は、2%分の利上げに等しい引き締め効果がある」と述べ、利上げペースは慎重であるべきとの見解を明らかにした。

市場では、米国の先行きを見通すうえで、欧州連合(EU)離脱決定後の英国の経験が参考になるとの声が出ている。

米国同様に双子の赤字を抱え、金融・サービスに特化した産業構造を持つ英国では、ブレグジット決定後に英ポンドが大幅下落。

英国債はいったん買われたが、売り戻され、英長期金利はブレグジット以前の水準に上昇して現在に至っている。

 「米経済は英経済より格段に規模が大きいが、米国内で赤字を賄っていけるとは本気で考えてはいないだろう。外のマネーに頼った赤字ファイナンスの帰結は、金利高とドル安しかない」(大手国内運用機関ファンド・マネージャー)との見方が根強い。

米財務省が16日に発表した9月の対米証券投資統計では、海外投資家による米国債の売り越しが766億ドルと1978年1月統計開始以来最大となる一方で、金利の高い米政府機関債には、月次平均で340億ドルの資金流入が続いている。

第2四半期の米経常赤字は1199億ドルと高水準。2016会計年度(2015年10月―2016年9月)の米財政赤字は、前年度比33.8%増の5874億ドルだった。国内総生産(GDP)比は3.2%と15年度の2.5%から上昇している。

(森佳子 編集:田巻一彦)

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