ダイヤモンド社のビジネス情報サイト

焦点:米国債投資ためらう国内勢、膨らむ含み損 一部銀行は積極化

2016年11月17日

[東京 17日 ロイター] - 米国債利回りが急上昇しているが、日本の機関投資家は米国債投資に二の足を踏んでいる。為替ヘッジコストを差し引いても、利回りが確保できるようになったものの、低金利時に購入した債券は含み損が膨らみ、金利が一段と上昇(価格は下落)すれば、傷口が拡がりかねないためだ。

ただ、一部の国内銀は米債投資を開始したとの見方もあり、日本勢の本格投資の号砲が、近い将来に鳴る展開も予想される。

<前週の対外債券投資、買い越し額は減少>

 「トランプ相場」で米金利が急上昇するなか、生損保や銀行など日本の投資家は米国債投資を再開させているのか──。

財務省が17日朝に発表する「対外及び対内証券売買契約等の状況」が、いつも以上に注目されたが、11月6日─12日の対外中長期債投資は4662億円の買い越し。金額は前週の6053億円から減少。その前の過去1カ月の平均6470億円と比べても、ペースはむしろ落ちた。

今年前半まで、生損保など国内機関投資家のメーンの投資先は、為替ヘッジ付き米国債だった。日本国債の多くがマイナス金利に沈んだことで投資できなくなり、その「代替品」として為替リスクのないヘッジ付き米国債を選好していた。

しかし、今年夏場にかけて為替ヘッジコストが上昇。9月末には1.7%程度まで上る一方、昨年12月の米利上げ後もなかなか米金利が上がらないなかで、3カ月間のヘッジコストを勘案すると10年米国債購入時の利回りがついにマイナスになり、ヘッジ付き米国債への投資は難しくなった。

日本の機関投資家は、為替ヘッジを付けないオープンの米国債や、格付けの高い米国のエージェンシー債や社債、または欧州債など、運用の多様化を進めている。だが、米国債に替わる「流動性を持つ商品は他にない」(中堅生保の運用担当者)とされる。

そこに、米大統領選でのトランプ氏勝利を機に、金利上昇局面が到来。米10年国債利回り<US10YT=RR>が2.2%まで上昇するなか、ヘッジコストを差し引いても利益が出るようになった。

<ヘッジコストもじわり上昇>

しかし、前週までの段階では、日本の投資家からの積極的な買いはみられていないようだ。「国内勢は『トランプ相場』に乗り遅れている」(国内金融機関)との声も挙がる。しかし、その慎重な姿勢の背景には、複数の要因があるようだ。

ある邦銀では、大統領選を挟んで米金利が急騰した際、10年国債利回りが1.9%に上昇するまでは「買い下がれ」との号令がかかったという。

ところが、2.0%に上昇しても勢いが止まらず、今度は「うかつに手を出すな」と、買いの動きに急ブレーキがかかったという。

金利上昇は裏を返すと、債券価格の下落。低金利時に買った米国債は含み損が発生している。「低金利で買った債券が『塩漬け』となって、身動きできなくなっている投資家は多い」と、国内金融機関の営業担当者は解説する。

金利が急上昇(価格急落)しているときは「落ちてくるナイフに手を出すな、という格言が生きてくる」(国内銀関係者)という。

さらに米金利に並行して、日本の超長期国債の金利も上昇してきた。日本の20年国債・30年国債の利回りは、それぞれ0.4%台と0.5%台。長い期間、資金を固定するデュレーションリスクは高いが、米10年国債利回りからヘッジコストを差し引いた水準と大差はないところまで上がってきた。

また、為替ヘッジコストも、米金利上昇にともない再び上昇を始めている。為替スワップ取引では、円投/ドル転による3カ月物のドル調達コストが1.76%まで上昇し、リーマンショック後の2009年2月2日以来の高水準に達した。ヘッジ付き外債のヘッジ部分は、数カ月ごとに見直すのが一般的だ。

 「12月に米国が利上げすれば、そこでヘッジコストが上がるだろう。米国債投資には、まだ慎重にならざるをえない」(別の中堅生保・運用担当者)という。

<一部銀行に外債購入/日本国債売りの観測>

足元では、米10年国債利回りも2.2%台で落ち着きを見せ始めている。国内機関投資家の打診買いも見られている。

複数の市場筋によると、今週に入って国内銀の一角が米国債の本格購入を始め、日本国債の5年ゾーンの保有圧縮に動いたのではないかとの観測が出ていたという。

今後の展開に関し、バークレイズ証券のシニア為替・債券ストラテジスト、門田真一郎氏は、為替ヘッジ後のリターンが相対的に高い限り、日本国債から米国債に資金が向かいやすいと予想する。   

特に30年物では、米国債の利回りが3%台に乗せる局面もあり、0.5%台の日本国債とはかなりの開きがある。

米国債へのシフトが進めば、日本の超長期債は「じりじりとスティープニングの圧力がかかりやすい」(門田氏)とみられている。

(平田紀之 佐野日出之 編集:伊賀大記 田巻一彦)

スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR


ロイター発 新着ニュース

ロイター提供、日本と世界の最新ニュースをお届けします。

「ロイター発 新着ニュース」

⇒バックナンバー一覧