経営学教室・特別座談会の最終回。現場における問題発見力、問題解決力の低下の要因は、多岐にわたっており、これを実施すれば解決するというほど単純なものではない。では、少なくともどのような姿勢で、現場と向き合えばよいのか。さらに、「現場力」を支える「人」の育成が、従来型の社内教育だけでは対応できなくなっているいま、ビジネススクールはどのような役割を果たしうるのかについて、4人の出席者が熱い思いを語った。(司会 ダイヤモンド・オンライン客員論説委員 原 英次郎)

現場を問題視する前に
問われるべきは本社の役割

司会 現場の力を上げていくためには、どうしたらいいかという点については、問題の所在が多岐にわたっていて、これが対策の決定打というものはない。それでは、少なくとも、現場力を再生するために、どのような問題意識で取り組めばよいか、座談会のまとめとして議論したいと思います。

特別編・座談会<br />「日本企業の現場は本当に大丈夫か」(最終回)<br />―本社社員は現場に出向き、経営者はビジネススクールの実態を知ってほしい―河野 宏和(こうの ひろかず)「本社で会議ばかりをやっている人たちに、ぜひ現場に足を運んでほしいと強く思います」

河野 仮に日本企業が、コモディティ=ボリュームゾーンを狙うとしたら、まったく新しいビジネスモデルを生み出せる企業か、ナンバーワン、ナンバーツーが合併した企業でないとうまくいかない、という話がありました。しかしそれを認めてしまうと、大半の企業は生き残れなくなってしまう。そうした状況下で、現場力を上げようといっても、すごく難しいことだという矛盾を感じます。

 その一方で、本社の人たちの問題意識が低い、とも痛感しています。そもそも、現場力を強くするといっても、営業の前線も、生産現場も見に行かない人たちがたくさん会社にいて、付加価値を全く生んでいないのに、会議ばかりをやっている。そういう人たちに、ぜひ現場に足を運んでほしいと強く思いますね。それがないと、いろいろ視点を提示しても空回りしてしまうんですよ。