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ソーシャル グローバルトレンド
【第7回】 2016年11月22日
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武邑光裕 [クオン株式会社 ベルリン支局長]

「欧州文化首都」が国際観光時代をリードするこれだけの理由

2016年のECCに指名されたポーランドのブロツワフにある、ブロツワフ現代美術館。2006年にユネスコ世界遺産に登録された「千年ホール」に近接した施設を改築、ECCのために新設された。多彩な現代美術作品を際立たせる美術館は、純白で透明な空間。欧州で最も注目されている美術館である

近年、観光収入の増大や地域再生を目指し、都市が主催する文化事業が世界各地で開催されています。1990年代から世界の注目を集め、現在の文化都市ブームの起点となったのが「欧州文化首都」と呼ばれるEUの事業です。30年以上続くこのEU事業の今を見つめ、都市の祝祭の現代的な役割を考えます。

都市がテーマパークに
注目される欧州文化首都

 1990年、スコットランドの工業港湾都市グラスゴーで「文化が経済を牽引する」都市再生の成功事例(※1)が次々に起こりました。これをきっかけに、当時は「欧州文化都市」と呼ばれていたEU事業に世界の注目が集まることになったのです。

 欧州文化首都(ECC: European Capital of Culture) (※2)は、EU加盟国から毎年 2 都市 (2006 年までは 1 都市) が文化の首都として選ばれ、選定された都市は独自のテーマを掲げ、市民の参加を前提とする数々の芸術文化イベントを1 年間にわたり開催します。開催テーマの設定は主催都市が練りに練ったもので、それに呼応して、いわば都市がテーマパークとなるのです。

2016年欧州文化首都に選ばれたブロツワフ(ポーランド)とサンセバスチャン(スペイン)
Image © Creative Europe.

 近年の欧州文化首都(以下ECC)は、都市のイメージ刷新、 国際社会への情報発信など、開催都市とその市民の共創から生まれたさまざまな成功事例が世界から注目されています。このECCの成功に続こうとする取り組みには、アメリカ大陸文化首都カタロニア文化首都イスラム文化首都UK文化都市などがあり、近年はASEAN文化都市、2014年からは日中韓3ヵ国による東アジア文化都市も開催されています。さらに世界中でアートフェスティバルが数多く開催されているほか、日本各地でも地域の芸術祭が開催ラッシュとなっています。

(※1)1990 年に「欧州文化都市」に選定されたスコットランドの産業港湾都市グラスゴーは、コンベンション関連施設の整備と新たな観光資源の開発に成功し、衰退した工業都市から「新たな文化都市」へとイメージの刷新に成功し世界の注目を集めた。

(※2)1983年11月23日、ギリシャの文化大臣メリナ・メルクーリ(当時)はアテネのザッペイオンに欧州共同体の文化大臣を集め、「欧州文化都市(European City of Culture)」の必要性を提唱し、1985 年、アテネが初回の開催都市となった。以降、各加盟国の文化担当大臣会議の協力による多国間事業として実施され、1999 年には欧州文化都市に共通政策としての地位が与えられた。同制度は 2005 年に「欧州文化首都(European Capital of Culture)」と改称された。

武邑光裕(たけむら・みつひろ)[クオン株式会社 ベルリン支局長]

メディア美学者。武邑塾主幹。日本大学芸術学部、京都造形芸術大学情報デザイン科、同大メディア美学研究センター所長、東京大学大学院新領域創成科学研究科、札幌市立大学デザイン学部(メディアデザイン)で教授職を歴任。2015年より現職。専門はメディア美学、デジタル・アーカイヴ情報学、創造産業論、ソーシャルメディアデザイン。著書『記憶のゆくたて デジタル・アーカイヴの文化経済』(東京大学出版会)で第19回電気通信普及財団テレコム社会科学賞を受賞。2015年よりクオン株式会社ベルリン支局長。2016年、取締役就任。


ソーシャル グローバルトレンド

ヨーロッパ各国から様々なクリエイターやテクノロジストが集まる街、ドイツ・ベルリン。この街を訪れると、自ずとソーシャルビジネスのグローバルトレンドを垣間見ることができます。本連載では、ベルリンに在住する著者が現地で見た、ソーシャルビジネスの最前線を紹介します。

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