変化する景気局面の勝者はどっち?
「一般機械」と「輸送機械」の綱引き

 2010年11月以降、景気の局面が変わった可能性がある。象徴的な動きを見せたのが、鉱工業生産指数だ。

 2010年10月までは一般機械(半導体製造装置、大型原動機など設備投資の対象となる機械)が増産基調を維持したのに対し、その他の多くの財は足踏みないしは減産に向かった。とりわけ4月をピークとして始まった輸送機械(自動車、船舶、列車客車など)の減産は鮮明であった。

 つまり、4月から10月にかけて「一般機械の上向きの力」と「輸送機械の下向きの力」による綱引きが展開された。前者に重きを置いたエコノミスト(筆者を含む)は「二番底なし」を、後者を重視したエコノミストは「二番底あり」をメインシナリオとしたであろう。

 この綱引きの結末やいかに? 暫定的ではあるが、11月以降の生産指数(12月、1月の生産予測指数含む)が答えを示している(図表1参照)。

着実に回復の歩みを進める2011年の日本経済<br />景気エンジンの「表の主役」と「隠れた主役」<br />――森田京平・バークレイズ・キャピタル証券 ディレクター/チーフエコノミスト

 すなわち、「一般機械の上向きの力」が勝つ形で、輸送機械を含む他の業種の多くが増産予測を立てている。「増産の動きが業種間で裾野を広げ始めた」という意味で、11月以降、景気の局面が一歩前進した可能性が高い。

2011年に起きる景気循環の
「表の主役」は輸出

 業種間で裾野を広げながら、2011年の景気は着実に回復の歩みを進めると筆者は見ている。もちろん、日本の抱える構造問題は数え上げたらきりがない。しかし、2011年の国内外の株式市場を念頭に置いた場合、当面、構造問題よりは景気循環への注目度を高めておいて良いであろう。