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焦点:4期目目指すメルケル独首相、政治人生最大の苦難に直面

2016年11月22日

[ベルリン 20日 ロイター] - 4期目を目指す意向を正式表明したドイツのメルケル首相は、これまでの政治人生で最大の試練に直面することになる。ドイツが推進してきたものの今や崩壊のリスクに直面する欧州統合計画を守り、米大統領選のトランプ氏勝利で動揺をきたした西側同盟の要石にならなければいけないからだ。

メルケル氏は、オバマ米大統領が退任すれば欧米の自由民主主義を牽引する唯一にして最後の希望の星にもなる。オバマ氏はこのほど訪れたベルリンで「メルケル氏が続投を選ぶなら、大きな荷物を背負うだろう。わたしが幾らかそれを軽くできればどんなに良いかと思うが、彼女はタフだ」とエールを送った。

実際、メルケル氏はタフであらねばならない。そもそもこうした国際舞台に立ち続けるには、まず来年9月の総選挙に向けて足元を固める必要がある。つまり移民政策を巡る保守連合内の亀裂修復だ。

来年の総選挙では反移民で極右のドイツのための選択肢(AfD)が初めて連邦議会に議席を得る公算が大きく、国内の政治勢力は分裂の傾向が強まるばかり。メルケル氏の保守党は社会民主党と再び連立を組みそうだが、AfDの台頭で連立の組み合わせは複雑化してきた。有権者がメルケル氏の長期政権に飽きてしまうリスクも否定できない。

<再選後の苦難>

そしてメルケル氏が首相に再選されたとしても、その先の課題の克服に苦闘を強いられるだろう。

欧州政策では、財政問題を巡ってドイツにユーロ圏の成長テコ入れのための支出拡大を要請している欧州連合(EU)欧州委員会との関係が気まずくなっている中で、統合計画を強化していかなければならない。

ドイツが他のEU加盟国に財政規律を守らせようとしてきたにもかかわらず、欧州委がドイツに支出拡大を求めているという事実からは、メルケル氏のEUにおける指導力の限界がうかがえる。背景にはドイツのオープンな移民政策への東欧諸国などからの反発がある。

週刊紙ツァイトのヨゼフ・ヨッフェ編集委員は、メルケル氏は自身の考え通りに他の加盟国に移民の負担を割り当てられず、南欧諸国に改革を伴う財政規律も受け入れさせることができなかった、と指摘した。

一方でメルケル氏は、欧州で最も影響力のある指導者として英国のEU離脱交渉に臨み、景気低迷や移民問題に悩む他の加盟国に離脱する気持ちを起こさせない形でしかも英国との緊密な関係を保つという任務を果たすことが求められる。

フランスのバルス首相は17日にベルリンで「欧州は解体の危機にあり、ドイツとフランスには重大な責任がある」と語った。

しかしフランスは来年の大統領選で極右の国民戦線の勢力が増大し、次期大統領の下で国論が1つにまとまりそうにないため、かつてのようにドイツと同等の力で欧州統合をけん引するのは不可能とみられる。

目先には12月4日にイタリアで憲法改正の是非を問う国民投票が実施され、否決されればレンツィ首相は辞任を迫られる。

こうした他の主要国の政治情勢を考えると、ドイツは気乗りしないながらもロシアからの影響力行使に対抗して欧州をまとめていく中心的存在にならざるを得ない。ただドイツが持つ軍事への消極的な姿勢から、メルケル氏がNATO(北大西洋条約機構)を束ねる能力は限定される。トランプ氏は、一部のNATO加盟国が応分の国防費を払っていないと批判している。

もっともメルケル氏は4期目出馬の会見で「どんな経験豊富な人物でもたった1人でドイツや欧州、世界全体を良い方向には変えられない。ドイツ首相でもそれは無理なことは明らかだ」と語り、自らに対する期待が大きくなり過ぎないよう予防線を張った。

(Paul Carrel記者)

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