2015年12月にスタートした「ストレスチェック制度」。従業員50人以上の事業所を対象に義務づけられたが、11月30日で初年度が終わる。この日までに「ストレスチェックを実施する」のが決まりだ(面接指導や労基署への届出等は、その後でかまわない)。本稿では、少し早いが初年度を振り返り、経過と問題点を考えてみたい。

「高ストレス者」の発生率が10%を上回る事業所が多い

 ストレスチェック制度の目的は大きく3つある。

(1)自らのストレスの状況について気づきを促し、労働者のストレスを低減させる
(2)職場におけるストレス要因を評価し、職場環境の改善につなげる
(3)ストレスの高い者を早期に発見し、労働者のメンタル不調を未然に防止する

 以下、それぞれについて見ていきたい。

ストレスチェックは意味があったのか?

 今回のストレスチェック制度では、事業者に対して「1年に1回以上の実施を義務づけ」られたが、労働者については受検を義務づける規定はない。

 そこで事業所の担当者にとっては、どのぐらいの社員が受検するか、つまり受検率が大きな心配材料だったと思われる。

 無論、事業所によって格差はあるはずだが、私が産業医を務める事業所では、おおむね90%を超える受検率だった。なかには従業員数が5000人を超える企業で、受検率が95%という例もあった。一方では受検率60%台にとどまる例もあったが、総じて受検率は良好だったと言える。

 これには総務・人事部の担当者による熱意のある説明や情宣活動が作用した面もあるだろう。

 また、業種の特性によるという一面もある。たとえば多店舗展開する小売業など、本社以外に拠点が分散する業種では、受検率が相対的に低かった。

 また労働者の側には、制度の初回だからやってみる、という心理も働いたかもしれない。

 では、ストレスチェックの結果は、どうだったか。