2011年の幕開けと共に、ほのぼのと心温まる現象が日本中に突如として広まった。そう、「伊達直人」を名乗る人物が、全国の児童養護施設に匿名でランドセルや文房具などを贈る「タイガーマスク運動」だ。

 この一件については、「まだまだ日本人も捨てたもんじゃない」「いい人って世の中にたくさんいるんだな」と、列島全体が優しい気持ちで包まれた感があった。しかし、その一方で浮き彫りになったのが、「日本ではまだまだ寄付文化が根付いていない」という事実だ。

 その一因として、欧米などと比べて寄付に関する税制が高いことなどが指摘されたが、ここにきて「寄付」ではなく自らの「消費」で社会貢献をしようという活動が、盛り上がっている。それが「エシカル消費」だ。

 “エシカル”とは、「倫理的」「道徳的」という意。売り上げの一部がそのまま寄付となる仕組みを作り、社会貢献を行なう企業が増えている。一般消費者にとっては、商品を買えば「消費」という形でそのまま社会貢献に参加できることになる。食品・飲料メーカーを中心に、この「エシカル消費」への取り組みには、すでに様々な例がある。

 たとえばエースコックは、カップめん「北海道味物語」シリーズ(今年1月末発売予定)の売り上げの一部を、旭山動物園の基金に寄付する。寄付金は、新施設の建設や修繕に充てられる。

 森永製菓は、今年2月14日まで、森永チョコレート1個につき1円を寄付する「1チョコ for 1スマイル <特別月間> キャンペーン」を実施中。森永ミルクチョコレートなど5つの商品を対象に、カカオの原産地であるガーナとインドネシアに売り上げの一部を寄付し、支援する。

 居酒屋「うおや一丁」を展開するヴィア・ホールディングスでは、指定するベジメニュー1品につき各々10円を、社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンへ寄付。アフリカの子どもたちに年間100万食を届けることを目標に活動中だ。

 この「エシカル消費」の先駆的企業として、ボルヴィックの「1L for 10L」プログラムがある。ボルヴィックの水を1L買い上げるごとに、アフリカで10Lもの清潔な水が現地の井戸から生まれるという、画期的なものだ。

 どういう仕組みかというと、売り上げの一部をユニセフに寄付することでアフリカに井戸が新設され、10年間のメンテナンスも併せて実現されるというものだ。この取り組みで、これだけの新鮮な水が確保できるという。

 このように、善意の気持ちを持っていても、なかなか「寄付」という行動に移せなかった層にとっても、誰でも気軽に参加できるところがポイントだ。これからは消費のあり方も、社会貢献を意識したものにしてみてはいかがだろうか。件の伊達直人現象は、我々日本人に極めて多くの示唆をくれたようだ。

(田島 薫)