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焦点:広がるAIファンド、「トランプ相場」では悲喜こもごも

2016年11月24日

[東京 24日 ロイター] - 金融市場でAI(人工知能)を活用したファンドが増えている。膨大な過去データやディープラーニング(深層学習)を使った株価予測への期待は高い。ただ、今回の「トランプ相場」における成績はファンドによってまちまち。人間も振り回される乱高下相場では、AIも例外ではなかったようだ。

<これで1勝1敗>

 「最初の試練だった」──。シンプレクス・アセット・マネジメントの野村至紀ディレクターは落胆の色を隠さない。日本時間9日、米大統領選でトランプ氏の優勢が明らかになると、日経平均<.N225>は一時1000円を超える急落。前日に買いシグナルを出していた野村氏が手掛けるAIファンドは損失を被った。

翌10日、損失はさらに拡大する。9日の値動きを取り込んだ野村氏のAIファンドは売りシグナルを出したが、非情にも日経平均は今年最大の上昇となる1029円高と急反騰。2日間の損失は2%強となった。

野村氏のAIファンドはTOPIX先物の過去一定期間の値動きを学習し、約140兆通りの組み合わせから最適な解を導き出す。ただ、今回の米大統領選後の値動きは予測できなかった。

突発的なイベントに対し、同氏のファンドが必ずしも負けているわけではない。多くの投資家が予想していなかった今年6月のブレグジット(英国国民投票での欧州連合離脱決定)。野村氏のAIファンドは事前に売りシグナルを出し、結果、1日で3%を超すリターンを確保した。

 「これで1勝1敗だ。米大統領選ではうまくワークしなかったが、今後はこのような荒い値動きへの対応力を高めるように、AIプログラムの改善に取り込んでいきたい」と、野村氏は意欲をみせる。

<「ブラックボックス」の面も>

今年3月末、三菱UFJ信託銀行が立ち上げたAIファンドは、高配当の現物株を保有する一方、AIモデルでヘッジ比率を算出し、配当利回り以上の安定的なパフォーマンスを目指している。

今回の米大統領選に向けては、AIモデルが前日にフルヘッジのシグナルを出し、「米大統領選当日の日本株の急落による損失は回避できた」と岡本訓幸チーフファンドマネージャーはいう。

もっとも同ファンドでは月の約半分でフルヘッジしているといい、米大統領選でのトランプ氏勝利を予見してヘッジ比率を高めたわけではない。加えて「事後的には解釈できることもあるが、なぜAIモデルがフルヘッジの指示を出したのか正確に把握することは難しい」(岡本氏)と述べる。

三菱UFJ信託銀行のAIモデルにはディープラーニング(深層学習)が使われている。人間の脳をモデル化したニューラルネットワークの規模を拡大し、膨大なデータから有用な規則や判断基準などを抽出するシステムだ。

東京大学・工学系研究科教授の和泉潔氏によれば、ディープラーニングに対し、「どのデータが作用したのかを把握できるケースもあるが、わからない場合も多い。特に複雑な要素が絡み合う金融市場の場合、AIが最適とはじき出した組み合わせに対して合理的な説明がしづらい」という。

それゆえ、顧客や上司に「説明責任」がある運用担当者は、AIファンドを敬遠することも少なくない。国内生保の運用担当者は「結果的にはパフォーマンスが良いのかもしれないが、現時点ではAIファンドがなぜその投資戦略を採用したのかという理由がわからないと資金を出す気にはなれない」と漏らす。

<安定相場で力を発揮>

AIファンドがその実力を発揮するのは、長期のパフォーマンスや安定した相場においてだ。

2010年に発表されたR.シューメイカー氏らの研究発表によれば、2005年10月26日─11月28日の5週間において、S&P500銘柄のファンドの取引結果を調べたところ、AIが運用するファンドがプラス8.5%となり、人が手掛けるファンドのパフォーマンスを上回ってトップになったという。

シンプレクスのAIファンドでも過去25年間において、月間の勝率は6割。平均リターンは2%だ。一方で負けた月の平均損失は1%程度。年率ベースでは7%のリターンを目標に掲げている。

三菱UFJ信託のAIファンドでも2008年─15年までの全年度でプラスとなり、年度別の平均リターンは8.4%だ。

 「AI運用は、例えると飛行機におけるオートパイロット」と東大の和泉氏は指摘する。上空での安定的な飛行、すなわち金融市場においてボラティリティの小さい凪(なぎ)の状態では大量データの取り込みやスピードの面でAIが勝るが、「いざ嵐が来たり、離着陸のような局面ではまだ人間にはかなわない」という。

とはいえ、今回の「トランプ相場」の大変動を人間が読み切ったわけではない。より予測精度の高い運用手法は何か──。将棋や碁のように、AIと人間が切磋琢磨していくことが期待されている。

(杉山容俊 編集:伊賀大記)

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