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弁護士・永沢徹 企業乱世を読み解く

新銀行東京に都民の血税注入の価値なし

――「超」能天気な再建計画に見る関係者の無能ぶり

永沢 徹 [弁護士]
【第21回】 2008年3月14日
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 2005年4月の開業から3年――。新銀行東京が大変なことになっている。石原都知事の2期目の選挙公約のもと、「民間にできない、中小企業への手厚い支援を」と大きな理想を掲げてスタートしたはいいが、取引先企業への融資焦げ付きが雪だるま式に膨らみ、自らの存続自体が危うい状態となっている。今年2月に再建計画が発表されたが、その中身は「能天気」としかいいようのない、「説得力ゼロ」のお粗末なものだった。

 そこに書いてある基本方針を見てみると、「これまで蓄積してきた営業ノウハウを踏まえて、中小企業支援を強力に推進する」とあり、さらに「経営コンサルティング会社等の専門的知識を活用して、経営再建を実現する」と続く。具体的には、「東京都の追加融資」と「業務縮小」ありき。この追加融資は自己資本比率4%を割らないための一時しのぎであり、また業務縮小は、将来的に他社への売却の道を探るための策ではないかと思われる。

 収益計画を見ると、現在(平成20年度)の総資産5150億円を、3年後の23年度には約4分の1にあたる1360億円にまで圧縮するとされている。事業規模を大幅に縮小しつつも、純資産は変わらず保つという。普通に考えてみれば、資産を3000億円以上も圧縮するということは、不良債権を売却することになり、大幅な損失が出る可能性が高い。しかし、今回の計画にはその損失がまったく考慮されておらず、信じられないくらい“能天気な”計画となっているのだ。

開業時から誤算続き

 そもそも、新銀行東京はM&Aでスタートした。外資系のBNPパリバ信託銀行を買収して発足したわけだが、その開業までには実に1年もの時間がかかっている。すぐに開業するために既存の銀行を買収したのに、そこまで開業が遅れたことは最初の誤算だったかもしれない。

 また、「中小企業の支援」を掲げるのであれば、中小企業の金融に詳しい人材がいて、顧客基盤がある金融機関を買収するのが当然である。しかし新銀行東京は、中小企業の顧客基盤もない外資系投資銀行をいきなり買収。人材は寄せ集めであり、しかも経営陣は金融機関とは関係の薄い人物ばかり…。「どういう目的でこの銀行を買収し、こういう形にしていこう」という、グランドデザインがあったのかどうか――それすら疑問である。少なくとも、買収した銀行がBNPパリバではなく、東京スター銀行や新生銀行、あおぞら銀行であれば、融資や債権管理等のノウハウを持った銀行として誕生することができたはずである。そういう点ではスタートからつまずいた感は否めない。

機能しない取締役会と
大株主・東京都の怠慢

 また、本来であれば、買収した後どのように人材を活用し、経営資源の価値を伸ばしていくのかが大きなポイントとなるのだが、新銀行東京はそれがまったく管理できていない。先日提出された内部調査報告書(今回の経営問題をうけて、現経営陣が社内調査を行ない作成したもの)によると、あたかも元代表執行役の仁司氏1人に責任があったかのような記載があり、完全に責任をなすりつけている。もし元代表に問題があったとしても、その代表執行役をきちんと監視する役割のはずである取締役会はいったい何をしていたのか。

 また日常業務や決算数字についても、監視・管理を行なうのも取締役会の責務である。その責任を棚にあげて、まったく反省できていないというのは、本当に信じられない話である。ちなみに、その内部報告書を提出した現代表の津島氏も旧経営陣の1人である。

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永沢 徹 [弁護士]

1959年栃木県生まれ。東京大学法学部在学中に司法試験合格。卒業後の84年、弁護士登録。95年、永沢法律事務所(現永沢総合法律事務所)を設立。M&Aのエキスパートとして数多くの案件に関わる。著書は「大買収時代」(光文社)など多数。永沢総合法律事務所ホームページ


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