ダイヤモンド社のビジネス情報サイト

アングル:トランプ勝利で米銀の金融規制対応は「水の泡」か

2016年11月25日

[23日 ロイター] - 米大手銀は2010年に成立した金融規制改革法(ドッド・フランク法)を順守するために多額の資金を投じてきた。それだけにトランプ次期政権が議会とともに同法の撤廃もしくは大々的な修正に乗り出せば、せっかくの努力が水の泡となることを懸念している。

金融規制改革法は世界金融危機を受けて導入された。米大手銀はこの規制をクリアするために従業員を数万人規模で増やし、新たなシステムを構築したほか、一部事業の放出、機構の簡素化、自己資本の増強などに取り組んだ。

JPモルガン・チェース<JPM.N>の従業員が規制順守のために費やした時間は住宅ローン事業だけで1年間に80万時間に上るという。

銀行業界は金融規制改革法成立に反対し、原案のとりまとめが進む過程で内容や運用面の修正を求めてロビー活動を展開した。

しかし多大な取り組みを終え、実際にほとんどの規制が実行に移されている今となっては、同法の全面撤廃は銀行にとってありがたいというよりむしろ迷惑な話になる。

結果的に同法の施行で銀行の安全性は高まり、デリバティブ(金融派生商品)市場の透明性は向上したと業界幹部は評価する。だがトランプ次期大統領と共和党の有力議員の一部は、金融規制改革法を廃し、新たな規制を導入する方針を打ち出している。

新たな規制の内容ははっきりしないが、下院金融委員会のジェブ・ヘンサリング委員長(共和党、テキサス州選出)は「チョイス法案」と呼ばれる代替規制の草案をまとめている。

同法案は消費者金融保護局(CFPB)の廃止など銀行業界が支持する内容が盛り込まれる一方、自己資本規制の強化など業界が反対する内容も混在している。

新規制導入は一部の民主党議員から強い抵抗に遭う公算が大きい。とりわけCFPBの導入を主導したエリザベス・ウォーレン上院議員が激しく反対しそうだ。

JPモルガンやバンク・オブ・アメリカ(バンカメ)<BAC.N>など米大手行の株価は、規制緩和が進むとの期待感からトランプ氏の大統領選勝利後に大幅上昇している。

それでもロイターが取材した銀行関係者、法律専門家、コンサルタントなどはいずれも、金融規制改革法の大幅な見直しには何年もかかり、銀行にとってコストが膨らみそうだとの見方を示した。

プライスウォーターハウスクーパースで銀行規制を扱っているマイク・アリクス氏は、規制撤廃で危険なのはコストの上昇と混乱の発生だと指摘。「銀行は概ね今の規制に沿うように体制を整え終えており、再調整は見込んでいない」と警戒する。

業界筋によると、望ましいのは金融規制改革法の全面撤廃ではなく、面倒で見当違いの項目の部分的な廃止だという。例えば銀行の自己勘定取引を規制する「ボルカー・ルール」は廃止を望む声が多い。

大手行の一部は、金融規制改革法の行方を見定めようと、規制順守への取り組みに慎重になっている。

バンカメのモンタグ最高執行責任者(COO)は今月のある会議で、ボルカー・ルール順守のためにさらに3000万ドルを支出するだけの価値はあるのかどうか判断が難しいと明かした。もしかしたらまったく無駄に終わる可能性がある半面、支出を見送ってルールが予定通り実施された場合はリスクにさらされる危険があるからだ。

(Olivia Oran記者)

スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR


ロイター発 新着ニュース

ロイター提供、日本と世界の最新ニュースをお届けします。

「ロイター発 新着ニュース」

⇒バックナンバー一覧