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焦点:マイノリティに不人気のトランプ氏、米国の分断深めるか

2016年11月28日

Peter Eisler

[23日 ロイター] - 米大統領選に勝利したドナルド・トランプ氏に対する黒人やヒスパニック層の支持は、少なくとも過去40年間の大統領のなかで最も低くなっており、すでに人種や政治対立による事件の増加を引き起こしている米国での深刻な分断を露呈している。

ロイター/イプソスによる投票日調査によれば、トランプ氏が獲得したのは黒人票の8%、ヒスパニック票の28%、アジア系米国人では27%だった。黒人票の獲得率は2000年のジョージ・W・ブッシュ大統領、1984年のレーガン大統領が獲得した9%といい勝負だ。

ただ、無党派のローパー世論調査センターによる出口調査のデータでは、ブッシュ、レーガン両氏とも、ヒスパニック系有権者による支持率がはるかに高く、それぞれ35%、34%だった。

またアジア系米国人のトランプ氏への投票率は、当該グループの調査を開始した1992年以降に当選したどの米大統領よりも悪い数値となっている。

トランプ勝利の一因となった人種的な両極化によって、大統領選以降、白人至上主義者による祝勝イベントや、反トランプ抗議行動、公民権擁護の集会などにおいて対立が幾度となく表面化している。

過激主義による運動を調査している南部貧困法律センターの記録によれば、人種差別、排外主義、反ユダヤ主義によるヘイトクライム(憎悪犯罪)が数百件も発生。同センターは、投票日の翌日9日から16日までのあいだに「憎悪・差別による嫌がらせや脅迫」が701件発生し、選挙直後にこうした事件が急増していると報告している。

対立が続く兆候は現れている。

アフリカ系米国人やユダヤ人などのマイノリティを批判する白人分離主義者グループ、ロイヤル・ホワイト・ナイツ・オブ・ザ・クー・クラックス・クランは12月3日、ノースカロライナにおいて、トランプ氏の勝利を祝う異例の集会を計画している。

また、左派・無政府主義者のグループは、1月20日の大統領就任式を妨害するべく組織的な抗議行動を呼びかけている。その翌日には「ワシントン女性行進」というイベントが予定されており、「トランプ大統領」への抗議に数十万人が集まると予想されている。

コーネル大学のジャミラ・ミチェナー准教授(統治論)は、2期にわたるオバマ政権期を通じて、米国政治では人種的対立が強まってきたものの、「党派を問わず、全体として、そうした対立を水面下に抑え込もうという努力が見られた」と語る。

だがトランプ氏が主張する反移民・反ムスリムの論調によって、「そうした分断が表面化。右派の人々は認められたと思って活発化し、左派の人々はこれを脅威と受け止めて活発化している」と同教授は指摘する。

こうした動きは、先週、顕在化している。

19日、ニューヨークでマイク・ペンス次期副大統領がブロードウェイのミュージカル「ハミルトン」を観劇していたところ、多人種からなるキャストが終演後の舞台でトランプ大統領就任に対する懸念を表明した。

その翌日には、これとは大幅に異なる見解が示された。強い反ユダヤ主義の信条を持つ白人ナショナリスト団体、ナショナル・ポリシー・インスティチュート(NPI)がワシントンで開催した会議で、約275人の群衆がトランプ勝利に喝采を送ったのだ。

NPI総裁リチャード・スペンサー氏は、「私たちはドナルド・トランプ氏の大統領就任を選択した。私たちがこの夢を現実に変えたのだ」と述べた。

 「私たち自身とその子孫のために作られた白人の国」と米国のビジョンを説明した同総裁は、「トランプ万歳、国民万歳。勝利万歳」というナチスドイツ式の叫びで締めくくった。

<分断、そして対決へ>

トランプ氏の当選は白人有権者に支えられたものだったが、このグループにおいてさえ、獲得投票率は歴代の共和党大統領に比べて振るわない。レーガン大統領とジョージ・W・C・ブッシュ大統領、いずれの白人得票率も、トランプ氏の55%より高かった。

過去の投票パターンにも米国政治における数十年にわたる両極化の進行が現れているが、それでもトランプ氏をめぐる対立はさらに根深いものだ、と政治的過激主義の研究を専門とするジョージア大学のカス・ムッデ准教授は指摘する。「自分の子どもが他党支持者とデートすることさえ嫌だという人もいる」

実際、対立する党派に属する人々についての有権者の評価は、過去に類を見ないほど低くなっている。ピュー研究所の調査によれば、今年、民主・共和両党の支持者のうち、他方の党について「非常に好ましくない」と見る人が過半数に達した。他党に対する感情について測定を開始した1992年以来、初めての現象である。

同研究所によれば、これらの人々のなかで、他方の党政策は「非常に誤っており、この国の健全性を脅かしている」と考える人が最大の割合を占めている。

こうした深刻な分断を背景に、双方の活動家は自らの行動をより対決的な方向へと推し進めている。

トランプ勝利を受けて、数千人もの左派デモ参加者が米国内各地の街路を埋め、器物損壊が発生する状況もあった。

呼び掛けの多くは、トランプ新政権が人種差別を推進し、マイノリティ有権者の権利を奪う方向に裁判所その他の政治制度を押しやるという考えに根ざしたものだ、と無政府主義を奉じるウェブサイト「ItsGoingDown.org」の編集者ジェームス・アンダーソン氏は語る。彼のサイトは、就任式の妨害などトランプ大統領に対する大規模デモを呼びかけてきた。

アンダーソン氏によれば、左派の多くは政府機関に対して不信感を抱くようになっており、彼らが「非難すべき政治勢力」とみなすものと直接対決する行動主義の芽が育まれているという。「組織し、力と自立性を鍛え、反撃する。それが現状の答えだ」

政治的にこの対極となる、これまで2大政党に見捨てられたと感じていた右派の活動家たちにとっては、トランプ氏当選が新たな希望をもたらしている。

トランプ勝利の祝賀集会を来月計画しているクー・クラックス・クラン分派のトップ幹部、ジョン・ロバーツ氏は、彼自身のグループは非暴力的デモしか行っていないが、トランプ氏の当選は新たな政治闘争の時代をもたらす可能性があると指摘する。その闘争の多くは人種的対立をめぐるものになる、と同氏は語る。

 「トランプ氏が正式に就任すれば、いずれ何らかの時点で、それが沸点に達するだろう」と同氏は言う。「それがいつになるかは誰にも分からないが、生半可なことでは済まないだろう」

(翻訳:エァクレーレン)

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