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「トランプラリー」は減速、起点の米金利上昇止まる

2016年11月29日

[東京 29日 ロイター] - 「トランプラリー」が減速している。起点だった米金利上昇が止まり、ドル高/円安が一服、円安による業績改善期待で買われていた日本株も調整色が見えてきた。次期米大統領による政策期待がはく落したわけではないが、石油輸出国機構(OPEC)総会や、イタリアの国民投票などのリスクイベントを前に過熱感を冷ます動きになっている。

<ユーフォリア感は大きく後退>

28日終盤の取引で10年米国債<US10YT=RR>利回りは2.3214%と、前日終盤の2.370%から低下。トランプ氏の大統領選勝利以降、1.8%から2.4%まで一気に上昇(債券価格は下落)しただけに、値ごろ感からの買いや月末特有の買いが入った可能性もあるが、これまでの売り一辺倒の相場からは変わりつつある。

売りの勢いが落ちてきた理由の1つと考えられているのは、OPEC総会(30日)での減産合意は難しいとの見方が広がったことだ。減産合意に至らなければ、原油価格は下落し、予想インフレ率も低下。米金利に低下圧力がかかる可能性がある。

三菱東京UFJ銀行・シニアマーケットエコノミストの鈴木敏之氏が、足元の米金利上昇を、1)米連邦準備理事会(FRB)のバランスシート規模、2)予想インフレ率(FRBが計算する5年先から5年間のブレークイーブン・インフレ率)、3)VIX指数(別名「恐怖指数」)<.VIX>の3要素に分解してみたところ、予想インフレ率の上昇が一番影響が大きかった。

同予想インフレ率は1.9%台前半まで上昇。FRBの目標である2%に近づいている。原油価格の下落懸念だけでなく「予想インフレ率がFRBにアンカーされるとすると、これ以上の米金利上昇余地には限りがある」と鈴木氏は指摘する。

4日に行われるイタリアの国民投票への警戒感で、欧州金利も低下(イタリアの国債金利は上昇)。同じく4日に行われるオーストリアの大統領選の決選投票では、上位2人の候補の1人に極右政党候補が残っており、予断を許さない情勢。ユーフォリア(幸福感)と呼ばれた金融市場の楽観ムードは様変わりとなっている。

<日本株買い・円売りの「逆回転」に警戒>

米金利上昇は、「トランプ相場」における連鎖の出発点となっている。米金利上昇でドル高が進む半面、資金流出懸念やドル建て債務拡大懸念で新興国市場の通貨や株式はさえなかった。

一方、日本では、円安による業績改善期待で日本株が上昇。リスクオン相場の歯車が止まってしまえば、日本株の上昇モメンタムも失われてしまう可能性がある。円安以外に日本企業の業績を大きく伸ばす要素は今のところ見られない。

足元の日経平均<.N225>の予想PER(株価収益率)は15倍強。ニッセイ基礎研究所・チーフ株式ストラテジストの井出真吾氏は「日本株に割高感はないが、これまでの上昇で割安感もなくなった。これからは為替次第」と述べる。

一部の海外投資家は日本株の投資判断をオーバーウエートに引き上げているが、その多くは円安による業績改善期待を理由に挙げる。円安がストップもしくは円高傾向に戻ってしまえば、買う理由を失いかねない。

また、日本株投資を行う一部の海外投資家は、円安による目減りを防ぐために、日本株買いと同時に円売りを行う。円安に動けば、円売りポジションからの利益が出るためだ。日本株の買いが止まれば、円売りも止まる。円安による業績改善期待が後退すれば、日本株を買う理由がなくなるという逆回転が起きるおそれもある。

<来年のFOMCはハト派寄り>

今後の「トランプ相場」の焦点は、米金利が再び上昇を始めるかどうかだ。そのポイントはOPECを別にすると2つ。FRBが2%以上の物価上昇を容認するか、トランプ氏の政策がうまくいくかどうかにかかっている。

イエレンFRB議長が講演で言及した「高圧経済」のコンセプトによれば、比較的高いインフレを容認する可能性がある。また、FRBには現在空いている2つの理事ポストがあり、トランプ政権の意向を反映してハト派が就任すれば、インフレを許容しやすくなる。

地区連銀で投票権を持つ「FOMCメンバー」からも、タカ派とみられているカンザスシティー地区連銀のジョージ総裁と、クリーブランド地区連銀のメスター総裁が2017年に外れる。代わりにハト派とみられているシカゴ地区連銀のエバンス総裁やミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁が入る(タカ派はフィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁)。

トランプ政権の政策がうまくいき、米金利が上昇するケースもある。ドル高による国内景気圧迫や、財政赤字問題をクリアして、自然利子率が上昇するようであれば、債券利回りも上がってくる。いわゆる良い金利上昇だ。

しかし、それも次期米政権の陣容が明らかになり、具体的な政策がはっきりするまでは判断しにくい。期待先行で進んできた「トランプラリー」だが、いったん次の材料待ちとなりそうだ。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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