昨年12月、自治労は組合員を対象としたアンケート調査で、「過去3年間でパワハラを受けたことがある」と回答した人が21.9%に上ったと発表した。実に会社員の5人に1人が、上司や先輩からパワハラを受けているという計算になる。それが本当なら、事態は想像以上に深刻だ。しかし企業の社員を取材すると、深刻なパワハラが増える一方で、「パワハラ過敏症」とも言える雰囲気が蔓延している実態が見えてきた。そこには、日本の職場の構造変化が深く関わっている。(取材・文/プレスラボ・梅田カズヒコ)

苦労して就職先を見つけた“彼女”が
会社を辞める「耐え切れない理由」

 去年の夏、私の知人の女性は就職難のなか、苦労して就職先を見つけた。彼女は、「前から憧れていた業種だったし、勤務地は六本木だし、上司は良い人だし……」と満足げに語った。

 真面目な性格なので、しばらく安定して仕事を続けるだろうと思っていた。しかし、先月久しぶりに会ったところ、「会社に離職届けを出すことにした」という。

 意外に思った私が理由を尋ねると、どうやら社内でパワハラ(パワー・ハラスメント)が横行しているのが理由らしい。彼女の職場で起きているパワハラの状況は、以下の通りである。

・営業職の社員に対して、上司から日常的に怒号が飛んでいる。

・売り上げのノルマを達成できなかった社員に対して、売り上げを補填するために、上司が社員に実費で商品を購入するよう圧力をかける。ひどい場合は、家族や親戚にも商品を購入させるよう、圧力をかける。

・能力給で、成績が悪い人は月収10万円程度で働かされているケースもある。

・会社側が社員の能力を上回る無理なノルマを課すため、ノルマを恐れた社員が大口の取引き先から架空の注文を入れることもあり、社外にも迷惑をかけている。