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焦点:公正開示目指すフェアディスクロージャー、上場企業に課題

2016年12月5日

[東京 5日 ロイター] - 金融庁が導入を決めたフェア・ディスクロージャー(FD)ルールでは、開示対象となる情報をインサイダー取引規制の範囲と基本的に一致させ、それ以外の情報でも公表されれば株価などに影響を及ぼす可能性があるものと定める方向だ。しかし、対象範囲がはっきりせず、企業からはガイドライン制定を求める声もでている。株主や投資家との真のエンゲージメント(対話)に向け、上場企業には大きな課題が突きつけられている。

<不透明な開示対象>

FDルールは、上場会社が未公表の重要な内部情報を第三者に選択的に開示するのを禁じるルールで、欧米では導入されているが、日本にはなかった。

今回、企業が問題視するのは、開示の対象となる範囲が、インサイダー取引規制の対象となる情報以外でも、「発行者または金融商品に関係する未公表の確定的な情報であって、公表されれば発行者の有価証券の価額に重要な影響を及ぼす可能性があるものを含める」(作業部会案)としている点だ。

株価などに影響を与える可能性がある情報とは、何を指すのか。企業によっては、特定工場の稼働率や、国別の部品の売上高など、細かな内容も絡んでくる。情報開示に詳しい弁護士は、開示対象になる「情報の範囲を示すガイドラインは当然必要になるだろうが、どこまで作り込めるかは相当な作業になるだろう」と懸念を示す。

<グレーゾーン情報、HPで開示促す>

一方、金融庁の作業部会は、個人投資家など幅広くアクセスが容易になるよう、情報を各社のホームページ(HP)で公開することを認めている。これまで、重要事実は東証の適時情報開示閲覧サービス(TDネット)などでの開示が求められ、時間と手間を要したが、FDルールでは、重要事実でなければ株価に影響のありそうな情報の公開はHPを活用できる。

例えば、期初に会社が出した当期利益の予想数値から、実際の着地点が振れそうだと分かった場合、取引所ルールで開示が求められる3割まで振れていなければ、本来TDネットの開示はしなくてもよい。しかし、株価には影響する可能性があるため、これに関する会話を特定の投資家やアナリストと行う場合には、その内容をHPに掲載するという判断が各社できるようになる。こうしたグレーな部分は、従来は開示義務がなく、選択的に伝わることが問題視されていた。情報は、HPでの公表によって迅速に一般に伝わる機会が増える。

ガイドラインなど細かいルールを定めると、そのガイドラインを潜り抜けるような早耳情報の伝達が行われる可能性も否定できない。金融庁の作業部会は「ベストプラクティスを積み重ねる」方針を示している。

<求められる積極的な対話>

企業も、開示か非開示かの線引きをしにくいと、手をこまねいてばかりもいられない。その企業に関する情報が減れば、投資家の理解度も低下しかねない。理解が深まらなければ買いは抑制され、株価はセクターのなかでアンダーパフォームする可能性がある。

そうした状態を避けるために、何をすべきか──。独立系運用会社のレオス・キャピタルワークス(東京都千代田区)の運用本部、渡邉庄太・運用部長は、各社が自身の価値を見つめ直し投資家などに伝えることが会社の成長には重要だという意識を持つ必要があるとしたうえで、「それを伝えることを怠ってしまうなら上場企業である意味は全くない」と、積極的な対話を求める。

コーポレートガバナンス・コードが2015年6月に適用されてから約1年半。独立社外取締役の2名以上の起用や持ち合い株式に関する考え方の説明など、体制は整ってきた。日本株に投資する海外投資家は「ガバナンスコードの導入から(今回のFDルールまで)一連の流れを歓迎している」(コムジェストの日本株運用担当者、リチャード・ケイ氏)と話す。

ただ、これからさらに呼び込みたいのは新しい投資家だ。国をあげて「貯蓄から資産形成」を促すために、NISA(少額投資非課税制度)やジュニアNISAのほか、2017年からは公務員向けの個人型確定拠出年金(401k)が始まる。株式投資が一般にも拡大する制度は増えてきた。

国内外ともに、日本株に投資をしたことのない人たちが日本株を買うかどうかは、企業の生産性向上と成長に加え、選択的な情報開示をあらため、エンゲージメントを実践できるかどうかも左右する。上場企業の対応はこれからが正念場となりそうだ。

(江本恵美、取材協力:トム・ウィルソン 編集:石田仁志)

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