
現在、経営者や感度の高いビジネスパーソンの間で、“ヒーローズジャーニー”(英雄の旅)という考え方が、個人の成功法則として注目されている。
“ヒーローズジャーニー”とは、もともと米国の神話学者であるジョセフ・キャンベルが、世界中の神話を研究するなかで、ストーリー展開の共通パターンを発見し、それを独自にまとめたものだ。
そのパターンとは、物語の主人公が(1)Calling(天命)を知り、(2)Commitment(決意)して旅が始まる。途中で(3)Threshold(限界点)に突き当たり、(4)Guardians(メンター)と出会って成長を始める。
そして、(5)Demon(怪物)との戦いを経て、(6)Transformation(変容)して、(7)Complete the task(試練の終了)となり、成長した姿で(8)Return home(帰還)し幕を閉じる、というもの。
キャンベルは、古今東西の神話に共通するこの構成こそが、人々の心を捉え、感動を呼ぶ“黄金の法則”であると考えたのだ。
この法則に影響を受けたのが、映画監督のジョージ・ルーカスであり、1977年に公開された映画『スターウォーズ』にその思想を取り入れたことは、広く知られている。
また、一説には多くのハリウッド映画がこの法則に則るか、もしくは何らかの影響を受けて作られていると言われている。
それを個人の人生やビジネスにも当てはめて行動し、自分の成長を図ることが、自己啓発を意識する人たちのトレンドとなりつつあるのだ。
たとえば、自分が猛烈なスランプに陥っているとすれば、それは、(3)Threshold(限界点)にあると見ることができ、次のステップに行くためには(4)Guardians(メンター)が必要と考える。具体的には、それが助言をくれる人だったり、偉人の本だったりするわけだ。
また、強力なライバルが出現したときは(5)Demon(怪物)のステージにいると見ることができ、それを乗り越えれば(6)Transformation(変容)が待っていると認識する。
こうして、神話の普遍的な構造を意識しながら、次のステップを思い描いて行動することで、成長のスパイラルに乗る。そして、その(1)~(8)のパターンを繰り返すことで、人生もビジネスも持続的な成功に導くというのが、ヒーローズジャーニーのビジネス活用における基本的な考え方なのである。
この法則に基づいたセミナーや個人向けコーチングを展開するコンサルタントの荻野淳也氏は、「2009年初めくらいからコーチングの世界でも本格的に注目されるようになり、この1年で徐々に普及。セミナーやプログラムもいくつか見られるようになっています。また企業内で組織の活性化に応用している会社もあるようです」と話す。
荻野氏自身も、2010年1月にワークショップ形式のセミナーの開催を予定している。
さて、2010年はヒーローズジャーニーに続き、「U理論」という考え方が注目を集めるという予測もある。不況や方向性が定まらない世の中の影響もあり、ビジネスパーソンが自分のスキルの向上や人生の軌道修正のために自己啓発に力を入れる傾向は、今後さらに強まりそうだ。
(大来 俊)