「結婚したいけど、いい出会いがない」「結婚したはいいけれど、うまくいかない」

 ――街やオフィスには、独身者や既婚者のこんな溜め息が溢れている。

 「結婚」が難しくなっている。言い換えれば、日本中が結婚についてよくわからなくなっているようだ。

 昨今では、婚活ブームが盛り上がっているが、「結婚について希望が持てない」と言う独身者は後を絶たない。ライフスタイルや価値観が多様化したうえ、結婚に関わる損得を否が応でも考えさせられる情報が世の中に溢れすぎているため、「結婚=幸せ」という既成観念を信じ込むことができない。これは、当事者たちにとっては、想像以上にきついことだ。

 理想と現実のギャップは、既婚者の間にも生じている。ささいな価値観の相違から夫婦がいがみ合うようになり、互いに一歩も譲らず、いくら話し合っても相手に気持ちが通じなくなる。その溝は気づかぬうちに、修復不可能なレベルまで広がってしまう。

 せっかく出会ったパートナーとの「別れ」を選ぶ男女は、毎年大量の数に上る。別れまではしないにせよ、家庭内別居状態に陥ってやるせない思いをしている人は多い。

誰もがうすうす気づいている――。
もはや昔ながらの「結婚像」は失われたと

 誰もがうすうす気づいているとおり、「昔ながらの結婚像」はすでに失われてしまっている。

 それでも結婚という制度は存続するわけで、なんだかよくわからないものに対して焦ったり、悩んだりするのは正直疲れる。疲れるけど、やっぱり「現状を何とかしなくてはならない」と思うから、さらに疲れる――。我々はまさに、「結婚受難時代」を生きている。

 かつて、誰もが当たり前のように経験することができた、「結婚」という日常的な幸せ。その結婚に今、何が起こっているのか? 

 この連載では、従来の結婚像が失われた社会で人々が右往左往している状態を「ロス婚」(ロスコン=Lost Marriage)と呼び、その実像を描くことを通じて、「日本人の結婚」を改めて問い直していく。