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焦点:トランプ氏が仕掛ける中国試し、「台湾カード」の危険性

2016年12月7日

[ワシントン 5日 ロイター] - ドナルド・トランプ次期米大統領は先週、台湾の蔡英文総統と電話会談し、中国に対する強硬姿勢を示唆したが、貿易や北朝鮮といった問題をめぐり、中国から譲歩を引き出すための危険な賭けをどこまで推し進めるのかは定かではない。

米国と台湾の首脳は1979年の米中国交正常化以来、直接コンタクトを取っていなかった。

トランプ氏と蔡氏の電話会談を受け、中国政府は外交ルートを通じて米国政府に抗議。来年1月に退陣するオバマ政権は、長年かけて共和、民主両党による政権が慎重に築き上げてきた対中関係の進展を損ないかねないと警告した。

もしトランプ氏が過度に自分の考えを通そうとするなら、中国との軍事対立を招く可能性があると、専門家らは指摘する。

同氏の側近とマイク・ペンス次期米副大統領は、蔡氏との10分間に及ぶ電話会談は「表敬」であり、対中政策の変更を示すものではないとして、火消しに追われている。

しかしトランプ氏は4日、中国の経済・軍事政策をツイッターで批判し、火に油を注いだ。一方、同氏の経済顧問であるスティーブン・ムーア氏は、中国が気に入らなくても「お好きなように」と述べた。

元米高官を含む専門家らは、台湾首脳との電話会談は中国に対する警告の第一弾にすぎないとみている。

トランプ政権の国務長官候補の1人とみられているジョン・ハンツマン氏は、ニューヨーク・タイムズ紙によれば、対中政策において台湾は「有益なレバレッジポイント」であることが証明されるかもしれないと語った。

同じく国務長官候補に挙がっているトランプ氏のアドバイザーで対中タカ派のピーター・ナバロ氏とジョン・ボルトン元国連大使は共に、アジアの領有権問題で主張を強める中国に圧力をかけるために「台湾カード」の利用を提案している。

だがこうした戦略は非常にリスクを伴うと、オバマ政権の米国家安全保障会議(NSC)で東アジア政策を統括するアジア上級部長を務めたエバン・メデイロス氏は指摘。「中国は1990年代半ばに、台湾問題は戦争と平和に関わる問題だと非常に明確に伝えてきた。これは米国が試すべき問題だろうか」

 「台湾問題は政治的にとても慎重さを要する問題であり、中国にとっては、他の何かと取引をすることはないであろう非常に優先度の高い利益だ。もし米国が台湾と正式に外交関係を結ぶことを決めたなら、北東アジアで軍事危機が起きてもおかしくはない」と同氏は語る。

米共和党政権時代のホワイトハウス高官で、2002─2006年に米国の在台湾窓口機関である米国在台湾協会(AIT)台北事務所元所長のダグラス・パール氏は、トランプ氏の側近らのアプローチは、中国が現在よりも弱く、米国が強硬姿勢を取れる立場にあった1990年代に基づいているようだと話した。

 「問題は、中国政府が1996年に(軍備の)10カ年増強計画を決めた。そのようなことを再び受け入れなくてはならない必要性は全くないだろう」と同氏は述べた。

<中国試し>

パール氏によれば、中国の習近平国家主席には、来年の党大会で地位固めをしたいという思惑があり、「台北事務所を正式な外交機関にするというような柔軟な態度を習氏が見せれば、ライバルたちの餌食(えじき)となる。そのような事態は起こさないだろう」との見方を示した。

また、米上院外交委員会のクリス・マーフィー民主党議員は、北朝鮮の核問題や通商問題で中国に圧力をかける方法として台湾を利用することは逆効果だと指摘している。

ヘンリー・キッシンジャー元国務長官や、トランプ氏と同氏の政権移行チームに助言する人たちも、40年来の「1つの中国」政策をあからさまに破ることには警鐘を鳴らしているという。

その結果、トランプ氏はまず、日本や他のアジア同盟国を動揺させないよう、米政策転換の兆しというような形ではなく、個人的な問題として電話会談を要請した。

だがその後トランプ氏が、為替操作や関税や南シナ海問題をめぐり、中国を非難するツイートを行うと、一部のアジアの国からは中国を故意に挑発して、危険なまでに緊張を高めることになるのではないかとの憶測を呼んでいる。

ニクソン大統領の歴史的訪中(1972年)の際に通訳を務めた元米外交官のチャス・フリーマン氏によれば、中国当局者は現在、トランプ氏の大統領としての意図がどのようなものとなるのか静観しているのだという。

 「彼ら(中国)はトランプ氏を侮辱したくもなければ、同氏と感情的に対立したくもないと考えている」と同氏は指摘。「トランプ氏に対し、『疑わしきは罰せず』というのが当初の反応だろう。同氏が自分のしていることの重大さを理解しておらず、周囲の人たちに操られている可能性もあると」と語った。

(David Brunnstrom記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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