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アングル:GDP確報値で消費上振れ、物価押し上げには力不足の声 

2016年12月8日

[東京 8日 ロイター] - 政府が8日発表した国内総生産(GDP)確報値(年次推計)で、2015年度家計消費が上方修正された。確報値には速報値になかった供給サイドのデータが盛り込まれ、実態に近づいたとみられる。速報値の消費は下方かい離しているとの日銀の主張を裏付けたかたちで、日銀内の一部では、物価上昇への手応えを感じている。ただ、この程度の消費の堅調さで物価が押し上げられるとの見方は民間では少なく、物価への波及は依然として不透明だ。

<日銀の消費活動指数と似た動き>

15年度GDP確報値(年次推計値)における消費(帰属家賃を除く家計最終消費支出)は前年度比プラス0.1%と速報値のマイナス0.5%から0.6ポイントの上方修正。

15年(暦年)では、速報値のマイナス1.7%から同0.9%と0.8ポイント押し上げられた。

日銀は、需要サイドの統計のウエートが大きい速報値のデータは、実態から下方かい離している可能性があると主張。

確報値と連動性が高いと日銀が説明する独自の「消費活動指数」を今年5月から公表し始めた。そのデータによると、実質消費活動(旅行修正調整後)は15年度にプラス0.1%となり、今回のGDP確報値と一致した。暦年でもマイナス0.8%とこちらもGDP統計とほぼ同じとなった。

日銀は、速報値における需要側の統計が、実勢と比べ弱過ぎということが確認できたとみている。

<手応え感じる日銀>

 「消費活動指数」の正当性に自信を深めた日銀が今後、「底堅く推移している」と判断している消費の動向を背景に、物価見通し引き上げに踏み切るのかどうかが大きなポイントして浮上してくる。

直近の同指数は、10月が7─9月期の平均値から0.6%上昇。日銀は消費が「底固め」されてきたと見ているもようだ。

また、物価については10月展望リポートで「個人消費が緩やかな増加に向かうにつれて、企業の価格設定スタンスが再び積極化していくほか、労働需給のタイト化が賃金設定スタンスを強める方向に影響する」と分析。それらを背景に2%に向けて上昇していくとの見通しを示している。

<民間エコノミスト、物価押し上げに懐疑的>

しかし、民間エコノミストからは、消費活動指数やGDP確報値における消費データが底堅く推移していても、値上げで販売打撃が生じないというほど消費の実態は強くないとの見方が目立つ。

SMBCフレンド証券チーフマーケットエコノミスト・岩下真理氏は「7日発表の10月消費活動指数も強かった。円安と原油・素材高の追い風もあり、機械的に計算すれば日銀が物価見通しを上方修正する余地はあるだろう。しかし、すでに値上げした小売は客足が減少するなど失敗例があり、企業の価格設定行動が変わるか疑問だ」と予想。1月に日銀が物価見通しを上方修正するには時期尚早とみている。

第一生命経済研究所・主席エコノミスト・新家義貴氏も「暦年でみれば14、15年と2年連続で消費がマイナスであり決して強いとは言えない。GDP統計で従来の認識よりは消費が落ち込んでいなかったことが確認できたとはいえ、年金生活者のウエートが高まっているため、消費の先行きは慎重にみておいた方がいい」としている。

あるエコノミストは、政府・日銀が直近の消費低迷の大きな要因として天候悪化を挙げていることに対し「的外れの見解だ。企業の内部留保が急増しているのに対し、賃上げが微増にとどまり、労働分配率が上がっていかないことに大きな理由がある」と指摘。「来春闘で経営者が慎重姿勢を貫けば、期待インフレ率は上がらず、物価は2%の目標に遠く及ばないだろう」と述べている。

消費低迷の「真犯人」が一体何なのか。政府・日銀は一刻も早く、その正体を暴き、適切な政策対応を求められている。

*確報値に「年次推計」を補いました。

(中川泉 編集:田巻一彦)

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