改正労働者派遣法施行こそ
日本が希望を失った分岐点

ibataオウチーノ代表取締役社長 兼 CEO
井端純一

いばた・じゅんいち/同志社大学文学部新聞学(現メディア学)専攻卒。リクルートを経て、『週刊CHINTAI』『ZAGAT SURVEY』取締役編集長などを歴任。2003年、オウチーノを設立。著書に『広報・PR・パブリシティ』(電通)、『30年後に絶対後悔しない中古マンションの選び方』『10年後に絶対後悔しない中古一戸建ての選び方』(河出書房新社)など。

 住宅ローン制度について考えていたら、日本人はいつから幸せでなくなったのだろう、という疑問に行き着いた。

 1950年代生まれの私は、高度成長期に育ち、大学を卒業した。子どもの頃は、つぎはぎのあるズボンをはいている友達も珍しくなかったが、幸いみなが平等に貧しかったから、貧しさなど感じなかった。

 いや、むしろ幸せだった。「これからどんどん良くなる」と、世の中全体が将来への希望に満ちていたからだ。ところが、今の日本では「将来が不安だ」という人の方が圧倒的に多い。

 希望が不安に転換したのは、いつか。私は、バブルが崩壊した1990年代初頭ではなく、改正労働者派遣法が施行された2004年が分岐点だったと思う。

 派遣労働を規制緩和し、派遣社員の受け入れ期間を延長したこの改正は、当時「厳しい雇用失業情勢、働き方の多様化等に対応するため」などと謳っていたが、実際は、経営者の都合で雇ったりクビにしたりできる労働者を増やしただけだ。

 派遣社員を含む非正規雇用者の数は2000年代に一気に増え、現在は2000万人を超える。それに伴い年収は下がり続け、今や年収400万円以下の人が全給与所得者の約60%を占める。年収200万円以下の人も1000万人を超えている。

 私は、住宅を買える人には、ぜひ買ってほしいと思っている。だが、このような状況で、住宅を買える人がどれだけいるのだと、暗澹たる気持ちになる。