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アングル:「プレミアムフライデー」の消費喚起、脱デフレには力不足の声

2016年12月12日

[東京 12日 ロイター] - 月末の金曜日に早めの退社を促し、家族や友人との食事や旅行、買い物などの消費を刺激しようという官民あげての「プレミアムフライデー」の取り組みが、来年2月から始まる。百貨店や旅行業界などはこれに呼応し、新たなサービスの検討を進めている。しかし、今の消費低迷の原因である所得の伸び悩みや将来への不安という構造的な問題が解決されなければ、新たな消費喚起策は期待外れに終わるとの指摘も多い。

<ライフスタイル転換、新たな消費を喚起>

経済産業省は12日、官民連携の「プレミアムフライデー推進協議会」を発足させ、「プレミアムフライデー」実施の概要を決めた。来年2月24日に初回、2回目以降も月末の金曜日を軸に実施する。

米国では11月の感謝祭後に小売店などで「ブラックフライデー(黒字の金曜日)」の安売りキャンペーンが行われている。しかし、日本で導入すれば、セールによってデフレ傾向を加速させかねないとの懸念もある。これに対し、「プレミアムフライデー」が狙うのは、従来よりも上質なイベントを楽しむ消費トレンドの創出だ。企画に関わっている関係者は「まだ喚起されてない部分の消費を刺激したい。新しい消費需要を作り出したい」と話す。

協議会にも参加している日本百貨店協会の近内哲也専務理事は「金曜日から週末の生活を楽しむというライフスタイルの転換につながるような、チャレンジングな政策になって欲しい」と期待を表明、協会として積極的に取り組む考えを示している。

すでに、来年のスタートを見据えて企業は計画を練っている。三越伊勢丹ホールディングス<3099.T>は、三越日本橋本店がある日本橋地区において高島屋<8233.T>、三井不動産<8801.T>と3社共同で企画を考えており、年末までに詳細を詰める。

旅行業界では、仕事を終えた金曜日のうちに出発するプランのメニューも増えそうだ。エイチ・アイ・エス<9603.T>は、国内旅行や近場の海外旅行の需要に結び付くと期待している。広報担当者は「羽田発の海外便は増便されており、都内で仕事が終わってから金曜日の夕方に羽田から海外に向けて出発することができる」と、関連付けたプランを出す可能性もあると話す。日本航空<9201.T>も企画を打ち出す方針。地方の商店街や自治体などからも関心が示されているという。

経済産業省では2億円の事業費を予算計上しており、2月24日に向けて積極的にPRしていく方針だ。

<働き方改革との連携効果が焦点>

第一生命経済研究所の永浜利廣首席エコノミストは、プレミアムフライデーの1日当たりの消費押し上げ効果を1236億円と試算する。これは、経産省と国土交通省が以前、有給休暇取得の効果を計算していたものをベースに行ったもの。

ただ、永浜氏は、金曜日に早期退社するために休日出勤や他の日の残業が増えるような事態を懸念。「会社を早く出ても、在宅勤務や他の場所で仕事を続けていては余暇時間が増えないので、効果は出ない。余暇時間を純増させることができるかが問題」と指摘する。

消費者の受け止め方も複雑だ。吉田麻衣子さん(38歳・医者)は「企業側の理解がないとうまくいかないのではないか。長時間労働の是正と合わせて進めないと、景気も良くないので、消費につながらないかもしれない」と話す。経団連では、13日の理事会で働きかた改革と連動させて取り組むことを決議、会員企業に働きかける方針。

親が早く仕事を終えても、子供が学校に通っていては、家族で旅行と言うわけにはいかない。ある流通関係者は「経済界を挙げて、早退ができる環境を整えなければならない。学校も文科省が音頭を取って金曜日の午後に帰れる体制を作ることが必要」と話す。前出の経済産業省関係者は、小中学校が授業を早く切り上げることは難しいのではないかとの見通しを示しながらも、各省庁への働きかけはこれから行っていくとしている。

7―9月期の個人消費は0.3%増と微増にとどまった。台風上陸や天候不順が大きな要因とされるが、15年4月の消費増税以降、消費は停滞していると言える。安倍政権は経済界に来春闘での4年連続の「ベースアップ(ベア)」を求めているが、ハードルは高そうだ。

SMBCフレンド証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは「支出が多い子育て世代などは、プチ贅沢に資金をまわすのはそれなりに買いたいと思うものでないと難しい」とみる。そのうえで「政府が社会保障の改革を進め、富裕層のシニア世代から子育て世代に分配をうながすような税制改正といった所得の再分配が必要。また、勤労者世帯には賃金の上昇が重要」と根本的な解決策の必要性を指摘している。

(清水律子 金子かおり 編集:北松克朗)

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