危険なレベルの認知症というのは、習得した運転動作を忘れる、または再現・実行できない。下手になる。こんな状態の時に、接触事故とか、脱輪とか、交通事故の原因になる。特に、注意力が低下した状態で、突然目についた子ども、無灯で走る自転車など。こういうものに対しては事故を引き起こしやすいと思われます。

一括りにはできない
認知症や高齢者の問題

――高齢者や認知症は、地域や環境によっても事情が異なり、本人の個人差という問題もありますね。

 そうです。決して一括りでは論じられない問題ですから難しい。

 私は昨年、国立長寿医療研究センターの「認知症の行動・心理症状(BPSD)などに対し、認知症の人の意思決定能力や責任能力を踏まえた対応の在り方に関する研究調査事業」に参加しました。

 その会議において認知症患者本人から、「自分の意思を尊重してほしい」「権利を擁護してほしい」との要望が出されました。

 患者団体の主張では、「一口に認知症と言っても、軽度な認知障害から重症までいろんな段階があり、すべてを一括りに議論しないでほしい」「東京と異なり地方では車が生活に必須で、高齢者から車を取り上げることは行動の自由を奪うことにつながり、家に引きこもりにさせる」、「限界集落のようなところでは、高齢者の自動車事故はほとんど見られない」「自動車事故は若者の方が多いではないか」との声がありました。

 確かに、高齢者の運転する自動車事故は最近報道されるようになりましたが、自動車事故総数に占める割合は決して突出して多くはありません。優良な高齢者ドライバーがいることも事実です。全国一律に、画一的に議論することはできません。

――明らかに危険な運転をしていて、家族が免許の返納を忠告しても言うことを聞かないケースがあるとも聞きます。

 正しい知識、正しい分別を持った高齢者ならば、自分の「身体機能の低下」や「認知機能の低下」を自覚した時、あるいは人から指摘された時、「人に迷惑をかけるから、止めた方が良い」と考えるのが普通です。

 危険な運転をしているのに言うことを聞かないのなら、それは既に自己抑制ができない状態。自分の我を張ることが優先して社会的・公的な迷惑がかかることがわからなくなっている。これは明らかに認知機能低下なので、免許を持つ資格は不十分と判断しても良いのではないでしょうか。