12月12日、トランプ次期米大統領による対中貿易や「一つの中国」政策に関する挑発的発言をめぐり、これまでの安定した米中関係の恩恵を受けてきた米国企業の間に動揺が広がっており、トランプ氏が実際の行動に出た場合は中国政府が報復に踏み切るとの懸念を強めている。写真はコロラド州で10月撮影(2016年 ロイター/Carlo Allegri)

[シカゴ/ワシントン 12日 ロイター] - トランプ次期米大統領による対中貿易や「一つの中国」政策に関する挑発的発言をめぐり、これまでの安定した米中関係の恩恵を受けてきた米国企業の間に動揺が広がっており、トランプ氏が実際の行動に出た場合は中国政府が報復に踏み切るとの懸念を強めている。

 トランプ氏は11日に米国政府がこれまで維持してきた「一つの中国」政策を必ずしも堅持する必要はないと発言。これに対し中国政府は「深刻な懸念」を表明した。

 対中政策に精通している4人の米業界筋は、同政策は過去数十年にわたって米経済界に恩恵をもたらしてきたと指摘。同政策の放棄を示唆するいかなる言動にも不安を感じると述べた。

 同筋は、トランプ氏が中国に対して行き過ぎた強硬姿勢を取った場合は中国政府が中国で事業を展開する米企業に対して報復する可能性があると語った。

 米経済界との関係が深い対中通商政策の専門家は「北京の信頼できる情報筋から中国政府・共産党が報復の対象となり得る米企業のリストを作成中との話を聞いている。対中輸出の上位を見れば報復を受ける可能性がある企業についてヒントが見つかるだろう」と語った。

 この専門家は、米国の30以上の州から中国向けに10億ドル超の輸出があり、米企業による中国国内の事業は5000億ドル以上に上っている。

 別の業界筋によると、企業は非公式にトランプ氏の顧問らと接触している。ただ、トランプ氏から非難を受ける恐れがあるために公式に同氏の対中政策について懸念を表明することはためらっているという。

 中国は過去に米中間の貿易摩擦が激化した際に米国製品に対して報復関税を導入してきた。2011年には米国製の大型車などに報復関税を導入した。

 同様の措置が再び取られた場合、影響がこれまでより大きくなることは必至だ。

 米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)が2015年に世界で販売した996万台の3分の1以上が中国向けで、この年の全世界での純利益(97億ドル)の約20%を合弁を含む中国事業が占めた。フォード・モーターの中国合弁会社は、15年の全世界の税引き前利益(94億ドル)の約16%を占めた。

 小売業界では、ウォルマート・ストアーズは中国に432店舗を展開。コーヒーチェーン大手スターバックスは中国国内に2500店舗ある。

 米航空機大手ボーイングは737型旅客機の「完成」工場を中国に建設する予定。

 米国勢調査局によると、米中間の貿易は15年に5990億ドルに上り、そのうち1160億ドルは米企業からの輸出だった。米企業による輸入は4830億ドルだった。

 トランプ氏と同氏の顧問らはこれまで、米国の対中貿易赤字は好ましくない貿易協定や中国による為替操作を反映していると主張してきた。

 ジョージワシントン大学のスーザン・アーロンソン教授は台湾をめぐる問題は対応が難しいが、それよりも中国製品に対して高い関税をかけた場合のほうが中国政府が米企業に報復措置を講じる可能性がかなり高まるとの見解を示した。

「中国指導部は安定を必要としているが、トランプ氏は混乱を引き起こしている」と指摘。「それに対して指導部は強い態度で応じる必要性を感じるだろう」と語った。

(Nick Carey, Ginger Gibson記者)