職場では、1対1の関わりのみで、若手が育っているわけではありません。1対1の若手育成は、必然的に上下関係になりますから、想像してみればお互いにかなり煮詰まりやすいことは明らかです。理想的な育成法を多くのビジネスパーソンが模索しているはずですが、まずはn対nの関係が成り立つ職場の風土をいかに醸成するかを考えてみる必要がありそうです。

「マネジャーなりたての人間のところに
新人を寄越さなくたって……」

 大手情報系企業で営業チームのマネジャーになったばかりのAさんが、やや疲れた様子で話します。

「管理職の仕事って、もう、キリがないぐらいあるんですよね」

「しかも、プレーイング・マネジャーなんだよな、きっと」

「もちろんです。数値責任も小さくない。管理職になって、ぐんとハードルが上がりましたよ」

「自分だけの成績ではなく、チーム全体の利益で評価されるわけだ」

「そうです。でも、数字を追うのは苦ではない。っていうか、いざとなったら、私ががんばって数字を上げてしまえばいいんだから。それに、やりがいがあるし、楽しいし」

「でも、仕事はそれだけじゃない」

 Aさんは36歳。会社の中では、ほぼ第一選抜と言ってよく、能力の高い人材です。

「年上の部下がいたりして、最初はどうなることかと思っていたけど、それは心配するほどのことはありませんでした。相手も大人だから、それは多少面白くないと思うことはあるかもしれませんが、表には出しません」