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社長!事件です イザという時に思考停止しないための「危機管理」鉄則集

海外子会社で不正取引発生!
調査に乗り込んだ本社の部長は問題社員を処分できず
その背景には何があったのか?

小川真人 [ACEコンサルティング株式会社 代表],白井邦芳 [ACEコンサルティング株式会社 エグゼクティブ・アドバイザー]
【第20回】 2011年2月16日
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海外子会社で不正取引発生

 ソウルにあるS興産は、S証券の韓国における金融子会社であり、同国において不良債権のバルクセールを取り扱っている。親会社であるS証券の内部監査部長のOは、S興産の内部監査チーム長との電話会議を終えると、すぐに、リスク管理統括責任者であるM常務に面談を求め、今しがた報告を受けた内容を伝えた。

 S興産の内部監査チーム長によれば、S興産のバルクセールビジネスの担当マネージャーの一人であるK副部長が、そのマネージャーの義理の兄が経営する企業と、不公正な取引をしているとの内部通報を受けたとのことであった。

 「K副部長は、バルクセール部隊のベテランかつエースですし、昨年度の子会社の利益の半分は、K副部長のチームがあげたものです。これは、何かの間違いだと思うのですが、至急、自分もソウルのS興産に赴いて、現状を調査して来ます」。O内部監査部長は、韓国出張をM常務に申し出て正式な出張許可を得ると、すぐにソウルへと旅立っていった。

 バルクセールとは、パッケージ化した多数の不良債権(以下、「バルク債権」)をセットにして、一括売却する手法のことであり、元利金が不払いになった時に、弁済資金確保の目的で処分できる担保が存在する担保付債権も、そのような担保が存在しない無担保債権も含め、複数の不良債権を取り合わせて、総額で売却するのが一般的となっている。

 バルク債権の取引価格は時価とされ、構成する個々の債権の債権額面金額の合計額よりも大幅に割引され、通常は、数分の1から数十分の1程度の低廉価格での取引となる。

 バルク債権を購入した側は、個別債権の内容を精査した上で、債権に付された担保を処分したり、債権を転売したり、債権者と交渉して債務の一部をカットした上で、残りの元本や利息の回収を行うなどの方法により、収入を獲得(資金回収)することになる。全体としての回収額からバルク債権への投資額を控除した金額が、利益となる仕組みである。

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小川真人(おがわまひと) [ACEコンサルティング株式会社 代表]

公認会計士、公認不正検査士、日本法科学技術学会正会員。慶応義塾大学商学部卒業後、1986年、ピートマーウィックミッチェル会計士事務所(現在のKPMGあずさ監査法人)に入所し、会計監査・リスクマネージメント業務に幅広く従事。2003年より2008年まで、(株)KPMG FASにて日本における不正調査サービスの責任者(パートナー)として、不正会計調査、経営者不正調査、従業員不正調査、個人情報流出事件調査など、多様な不正調査やリスクマネージメント業務を提供。2008年4月より、ACEコンサルティングを設立して独立。

白井邦芳(しらい くによし) [ACEコンサルティング株式会社 エグゼクティブ・アドバイザー]

AIU保険会社及びAIGグループ在籍時に数度の米国研修・滞在を経て、企業の危機・不祥事・再生に関するコンサルティングに多数関わる。2350事例にのぼる着手案件数は業界屈指。2009年から現職。リスクマネジメント協会評議員、日本法科学技術学会正会員、経営戦略研究所外部専門委員、著書に「ケーススタディ 企業の危機管理コンサルティング」(中央経済社)等がある。


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海外で発生するテロや暴動そして天災、果ては脅迫から社内の権力闘争の暴露まで。現代の企業はまさにリスク取り囲まれて活動している。ことは生命にかかわることが多いにもかかわらず、依然として、日本企業はこの種のリスクには鈍感。イザというときに、じたばたしないためには、準備こそがすべて。具体的な事例を基に危機管理の鉄則を公開する。

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