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焦点:欧州で深まる「壊し屋トランプ」の恐怖

2016年12月15日

[ベルリン 13日 ロイター] - トランプ次期米大統領は就任後に態度を改めるどころか、当初考えられていたより遥かに分裂をもたらす政策を実行しそうだ──。欧州当局者らは日に日にこうした懸念を募らせている。

メルケル・ドイツ首相のホイスゲン顧問(外交担当)は先月末、ベルリンの会合で、大統領就任という現実に直面すればトランプ氏も姿勢を変えざるを得ないと語った。トランプ氏は主要閣僚に共和党主流派のロムニー氏などの起用も検討しており、「心強い」と。

その2週間後、トランプ氏が「大統領モード」に転じるとの期待は去り、代わって新たな懸念が持ち上がっている。

トランプ氏は環境保護局(EPA)長官に地球温暖化に懐疑的な人物を指名、台湾を巡って中国と対立、複数のゴールドマン・サックス出身者を主要ポストに起用した。

こうした姿勢を見る限り、欧州は対ロシア政策からイランの核問題、自由貿易、気候変動に至るまで、幅広い論点を巡り米政府と対立を余儀なくされる恐れがある。場合によってはEU統合もその中に入ってくるかもしれない。

当地のムードを探ろうと最近ワシントンを訪れた西欧の上席外交官は「一貫性のある政策が打ち出されるというより、その逆になるであろうことが日ごとにはっきりしてきた」と断言。「どこから見ても分裂的だ。トランプ氏がどの分野について、どのような方法で分裂を引き起こすことになるかは誰にも分からない。しかしわれわれは、トランプ氏とはそういう(分裂の好きな)人物であり、それが彼の戦略の一部だとの見方に至りつつある」と述べた。

<人事が二転三転>

欧州当局者らを混乱させている一因は、トランプ氏の組閣作業の二転三転ぶりだ。ロムニー氏のような人物と会談したかと思えば、数日後には別の候補者が浮上する。

諸外国にとって最も重要な人事は、13日に発表された米石油大手エクソンモービルの会長兼最高経営責任者(CEO)ティラーソン氏の国務長官への指名だった。ロムニー氏らの候補者を抑えての起用となった。

この人事は様々な反応を引き起こした。欧州当局者からは、ティラーソン氏とロシアおよびプーチン・ロシア大統領との親密な関係を懸念する声が聞かれる一方、国際経験豊かな大企業トップの就任は心強いとの見方もある。

東欧の上級外交官は「見かけ上は、まったく良くない人事だ」が、「実際にロシアを知悉している国務長官が誕生すると考えれば、非常に興味深い」と語る。

ロシアに秋波を送るトランプ氏の姿勢に、メルケル首相の側近らは頭を抱えている。首相はウクライナ問題を巡る対ロシア制裁で、オバマ米大統領と足並みを揃えて欧州連合(EU)の陣頭指揮を取った。

トランプ氏が米国として制裁を撤回すれば、メルケル氏の対ロシア政策は崩れ、ウクライナは従来にも増して脆弱になる、とドイツ当局者らは語る。

イランと西側諸国との核合意にも心配は広がっている。トランプ氏が国家安全保障担当の大統領補佐官にイラン批判の急先鋒であるマイケル・フリン氏を指名したことで、懸念は一層強まった。

もっともイラン核合意は国連安全保障理事会の決議を経た国際合意であるため、トランプ氏が一方的に抜けるのは難しいだろう。

欧州が懸念するのは、トランプ氏が合意を維持したまま、核以外の分野でじわじわと制裁を掛けるシナリオ。そうなればイランが合意を破るような対抗措置を講じる恐れがある。

<革命的な事態>

欧米間の引火点になり得る問題は他にも、イスラエルのヨルダン川西岸での入植問題や金融規制の緩和など枚挙にいとまがない。

ドイツ国際安全保障問題研究所のフォルカー・ペルテス所長は、トランプ氏によるツイッターの多用も欧州諸国にとって悩みの種だと言う。

 「トランプ氏が『対ロシア制裁は馬鹿げているとプーチン氏に言われた』とツイートして、メルケル首相が午前3時に叩き起こされる?そんなことだって無いとは言い切れない」とペルテス氏は嘆く。

来年オランダ、フランス、ドイツで予定される国政選挙を巡る亀裂が、トランプ氏によってさらに深まる恐れを指摘する者もいる。来年は場合によってはイタリアと英国でも選挙があるかもしれない。

今年6月の英国民投票でEU離脱派が勝利した際、トランプ氏はすぐさま称賛の声を挙げた。EU離脱派の筆頭格である政治家のナイジェル・ファラージ氏とも親しい。

このため、極右政党・国民戦線のルペン党首が出馬する来年のフランス大統領選などを巡っても、トランプ氏の出方に関心が集まり始めている。

前出の西欧の上級外交官は、トランプ氏の首席戦略官兼上級顧問に指名されたスティーブン・バノン氏が、大西洋を越えて陰謀論をまき散らすことがないか、注視していくという。バノン氏は保守系サイト、ブライトバート・ニュースを率いた人物で、このサイトをドイツとフランスの選挙前に両国にも進出させる計画を発表済みだ。

 「欧州市民はショック状態だ」と言うのは、欧州改革センターのディレクター、チャールズ・グラント氏。「トランプ氏がファラージ氏を支持したようにルペン氏を支持するようなら、欧米関係にとって革命的な出来事になるだろう。もしもユーロやEU、西側リベラルの秩序の破壊を望み、かつ親ロシアの人物を支持するなら、欧米関係を後退させるどころではなく、破壊してしまうだろう」と語った。

(Noah Barkin 記者)

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