「子どもの貧困」報道でSOSが殺到する支援団体の悲鳴「子どもの貧困」報道の影響で、支援団体に助けを求める人々の問い合わせが殺到している。その結果起きている、皮肉な状況とは?

毎日のように、子どもの貧困の実態や対策に関する報道が行なわれている。しかし貧困の実態が伝えられ、対策の存在が伝えられるだけでは、必要とする人と対策を結ぶホットラインをつくることは難しい。そして思わぬところに「ホットライン」が求められることになる。(フリーランス・ライター みわよしこ)

「子ども貧困」支援活動の報道で
関係のない団体が忙殺される現状

 子どもの貧困に関する報道は、この数年で増え、内容も多様になった。貧困状態にある子どもたちの深刻な事例が報道されるだけではなく、支援団体や支援内容の多様さを伝える報道も増えている。

 貧困問題にかかわる支援団体のスタンスや活動内容はさまざまだが、多くの団体は、貧困状態にある子どもたちへの関心を歓迎している。厳しい状況の真っ只中にある子どもたち・親たちに安心と安全を提供し、相談・介入・食事の提供など日々の直接支援を支障なく続けていくため、自団体の支援の現場や当事者たちへの取材を受け入れない団体も多いからだ。

 しかし昨今、そういった団体の中からは、子どもの貧困と支援に関するメディア報道への困惑の声も聞かれる。

「他の団体さんの活動が報道されると、当方への問い合わせが増えたりします。たとえば、食糧などの物資を必要とする人々に配布する団体の活動が紹介されると、当方の相談窓口に『配布を受けたい』という問い合わせが多数あるんです」(中部地方・Aさん)

 物資の集積・配布活動を行っている団体の多くは、個人や家族を直接の対象にしていない。当事者団体や支援組織に対して物資を配送し、その団体や組織が、必要とする人々や家族に配布する形態を取ることが多い。背景にあるのはたいてい、「その人々や家族と直接の接触があり、状況がわかっている団体でなければ、誰がどういうニーズを持っているか把握できない」という考え方だ。

 もちろん、この方法には多くのメリットがある。たとえば「空腹を抱えた親子の元に年末向け食材として蕎麦が送付されたが、親子は蕎麦アレルギーだった」といった悲劇は、親子を直接知る団体や組織を経由させれば避けられるだろう。