12月13日、ユーロ圏各国は今、景気を刺激して有権者の不満を和らげるため、財政支出の拡大を求められているが、来年の国債発行計画を見る限り実現の望みは薄いようだ。写真は2ユーロ硬貨。ウィーンで10月撮影(2016年 ロイター/Leonhard Foeger)

[ロンドン 13日 ロイター] - ユーロ圏各国は今、景気を刺激して有権者の不満を和らげるため、財政支出の拡大を求められているが、来年の国債発行計画を見る限り実現の望みは薄いようだ。

 主要銀行の推計によると、ユーロ圏19ヵ国の来年の国債発行額は200億─400億ユーロ程度増える見通しだが、これは主に借り換え分。財政緊縮を止めて拡大に転じるよう呼びかける欧州連合(EU)欧州委員会の求めに対し、各国が応じる兆しは今のところ見られない。

 大半の国は2008年の世界金融危機の後始末による多額の債務を抱えて身動きが取れず、財政に余裕のある数少ない国の1つ、ドイツは財政均衡に固執している。

「ユーロ圏が抱える昔ながらの問題だ。財政支出が必要な国は債務水準が非常に高く、不必要な国に余裕がある」と語るのは、INGのストラテジスト、ベンジャミン・シュローダー氏だ。

 既に2017年の国債発行計画を発表したユーロ圏唯一の国、ベルギーは、従来の見通しを下方修正して今年よりも発行を減らす方針を示した。

 フランスとドイツは数週間中に、イタリアとスペインは1月に来年の国債発行計画を発表する見通し。

 ユーロ圏全体の17年の国債発行額は、INGの推計値が200億ユーロ(212億2000万ドル)増の8850億ユーロ、モルガン・スタンレーが270億ユーロ増の8760億ユーロ、コメルツバンクが400億ユーロ増の9000億ユーロとなっている。

 今ほど財政刺激が必要とされている時はないだろう。

 英国民投票でのEU離脱派勝利も、米大統領選でのトランプ氏勝利も、景気回復の恩恵を受けていないと感じている有権者の投票によるものだった。こうした中で来年はフランス、ドイツ、オランダ、そしてもしかするとイタリアで選挙が実施される。

 一方、ユーロ圏経済が2012年以来頼みとしてきた欧州中央銀行(ECB)の金融緩和は峠を越えた兆候が見られる。

 モルガン・スタンレーの欧州金利戦略責任者、アントン・ヒース氏は「政府がかなり大規模な財政拡大を約束したとしても、すぐさま着工できるプロジェクトが沢山あるのでもない限り、実際に国債発行が増えるまでには長期間を要する」と語る。

 ヒース氏は、EUには財政赤字が基準を超えた国を罰する規則がある一方、財政支出を促すような仕組みを持たないことが問題だと指摘した。

 EU財務相理事会は今月、来年の財政支出に目標値を設定するという欧州委員会の提案を却下した。

 2014年に45年ぶりの財政収支均衡を達成したドイツが均衡維持の方針を撤回しない限り、その他の国が積極財政を実施する望みは薄そうだ。

 コメルツバンクは来年のユーロ圏の国債発行について、借り換え分を除いた新規発行分の90%はフランス、イタリア、スペインの財政赤字穴埋めに回ると推計している。

 多くのユーロ圏諸国に財政の大盤振舞を思いとどまらせるのには、数年前の債務危機の記憶だけで十分なのかもしれない。

 トリシェ前ECB総裁は先週、ロンドンの会合で「状況を俯瞰すると、財政支出の余地が大きいとは思えない。2008年の危機が過度のレバレッジに起因し、その後ソブリン債務危機に見舞われたことを知っていながら、このような(財政支出拡大の)勧めに乗ろうとするのは少し奇妙だ」とくぎを刺した。

(John Geddie記者)