>>(上)より続く

 彼女が妊娠していなかったのは不幸中の幸いでしたが、男のせいで2人は精神的な負担だけでなく金銭的な負担も強いられることになりました。

「このまま(交際を)続けられるかどうか自信がないよ」

 彼女は自ら身を引こうとしてました。彼氏ではない男との性交渉は「裏切り」以外の何物でもありません。彼女には何の罪もなく、悪いのはすべて男です。しかし経緯はどうあれ、彼氏を傷つけ、悩ませ、苦しめたことに変わりはありません。だから事件以降、彼女の方も罪悪感や後ろめたさに苛まれ続けたのでしょう。

 俊さんがこのまま手をこまねいていると2人が完全に別れるのも時間の問題。では、俊さんが彼女と交際を続けていくには、どうしたら良いでしょうか?諸悪の原因は男なのだから、きちんと事件の落とし前をつけなければならず、俊さんは男と直談判する決意をしたのです。

男のマンションの前で待ち伏せ
「同意あり」と主張する男

 今回の場合、不幸中の幸いだったのは、男が彼女を自分の部屋に招き入れていたこと。彼女の記憶を辿ることで男のマンションを特定することができたのです。だから電話やメール、LINEが音信不通でも、マンションのエントランスで待ち伏せをして男が仕事を終え、帰宅するところを捕まえることができました。

 俊さんは胃腸がキリキリと痛むのを我慢して、ありったけの声を振り絞り、「酷過ぎるんじゃないか!彼女に僕という存在がいることを知りながら無理やり犯すなんて」とぶつけました。

「ちょっとやりすぎたけれどただの遊びだ!少し度が過ぎただけだろ!」

 男は開口一番、そんなふうに開き直ってきたのですが、性犯罪の違法性については男の個人的な意見より法律の公式的な見解の方が優先するのは言うまでもありません。交際していない男女が相手方の同意なしに性交渉に及んだ場合、明らかな違法行為です。具体的にいうと、力ずくで性交渉に及ぶ行為は刑法177条の強姦罪、酩酊状態で性交渉に及ぶ行為は刑法178条の準強姦罪なので男に言い逃れの余地はないはずです。

「あいつは首を縦に振っていたぞ!確認してみたらどうなんだ?」

 そんなふうに男は彼女の「首の動き」に焦点を当てて「同意あり」だと言い張りました。男はどのタイミングの話をしているのでしょうか?彼女いわく、最初の体を触られていた段階で何度も「やめて!」と頼み、男が「セックスをさせてくれたら彼(俊さん)には言わないから」と脅してきたので、最後の段階では恐怖のあまり身動きがとれなくなったという経過を辿っています。