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焦点:強まる日銀緩和効果、長期金利「永遠のゼロ」脱却あるか

2016年12月16日

[東京 16日 ロイター] - トランプ次期米大統領が打ち出そうとしている積極財政を中心とした経済政策(トランプノミクス)が、日銀のイールドカーブ・コントロール(YCC)政策の効果を大幅に強めている。このまま効果が増大すれば、多くの市場関係者が予想していない物価目標2%の達成に現実味が増す。

その時は長期金利ゼロ%の修正を検討する可能性があり、「永遠のゼロ」とたかをくくっていた市場の一部にも、金利上昇への思惑がくすぶり出した。

<想定外の連続>

日銀にとって、11月9日(日本時間)に米大統領選の開票が始まって以降、想定外の現象が連続して起きたといえる。米世論調査で劣勢だったトランプ氏の当選、そのケースで発生すると言われていた円高・株安の短期的な終息、直後から進んだ大幅なドルと米長期金利の上昇、そして円安と日本株高の急進展──。

複数の日銀関係者は、いずれの現象も「想定できなかった」と打ち明ける。表面的には「トランプ政権の政策の詳細が分からない中で、今の市場変動が継続するのかわからない。今後の展開を見極めたい」(幹部)との見解が表明されているが、トランプノミクスの起動によって、世界経済の大幅な地殻変動が始まるのかどうか、詳細な検討が水面下で始まったもようだ。

日銀が9月に採用したYCCは、一部の日銀OBの目からみれば「持久戦の態勢整備」と映った。実際、日銀内部からも、YCCの効果を「じっくり確認しながら、経済を下支えしていきたい」との声も漏れていた。

だが、11月9日を境に事態は急展開する。まず、米長期金利<US10YT=RR>が急上昇を開始。つれて101円台だったドル/円<JPY=EBS>が上昇を始める。円安の進展は日本株を押し上げ、日経平均<.N225>は2万円が視界に入る大幅上昇となっている。

円安・株高のメカニズム全開は、2013年のアベノミクススタート時のダッシュを思い出させる。

<シナリオ上振れ>

日銀内では、11月展望リポートで示したシナリオよりも、現状の経済・物価は上振れて推移しているとの声も聞かれる。「上振れの話はぜいたくだ」と、ある日銀幹部は感慨深げに話す。

これまで何度も物価見通しの下方修正に迫られてきた日銀にとって、足元で展開している経済情勢の変化は、久々に感じる「追い風」だからだ。

日銀は11月に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、10%の円安が、1年で0.3ポイント前後、1年半で0.45ポイント前後、2年で0.4ポイント前後物価を押し上げるとの試算を示した。

すでに10%を超える円安が進んでおり、これを機械的に当てはめれば17年度の物価見通しは1.5%から1.9%前後に押し上げられ、2%達成の前倒し余地が生まれることになる。

だが、先の幹部は「ゼロ%程度」としている長期金利目標の引き上げは「まだまだ先の話」と言うのも忘れなかった。

<円安加速の背景にYCC>

ある国内銀行の市場関係者は、米長期金利が2.6%台まで上昇する一方、日銀がYCCで長期金利をゼロ%に固定しているのは「海外勢から見て、これ以上わかりやすい構図はない。ドル買い/円売りは、確実に利益を出せるトレードとして彼らはみている」と話す。

現実に15日の欧米市場で118円台に上昇したドル/円は、16日の東京市場でも118円前半で推移。「当面は120円狙いの円売りが週明けも継続する」(国内証券関係者)という。

円安がさらに進んで120円台を突破した場合、輸入品の値上げを機にコアCPIがマイナスからプラスに転じ、「市場関係者の期待インフレ率が、本人も気づかぬうちに上がっていることも予想される」(別の国内銀関係者)との声も出始めた。

<市場が知りたい日銀の本音>

日銀内には、個人的な見通しだとしたうえで、コアCPIが1%台に乗せてからも上昇が継続すれば、長期金利のゼロ%固定を外し、誘導目標を引き上げるシナリオも考えられるという声が複数ある。

その一方で、長期金利目標引き上げの要件として、需給ギャップが持続的にプラス幅を拡大し、賃金の上昇を伴うかたちでインフレ期待が2%に向かっていく確証が必要だとの声もある。そうした見方に立つ関係者からは、異口同音に「今の段階では、いつ要件を満たすのか、想像するのも難しい」という声が出ている。

市場では「日銀の本音が知りたい」(さらに別の国内銀関係者)との声が漏れる。彼らの知りたい点を要約すると、2%目標までの道は遠いが、円安のテンポは速く、どんなに円安になっても、しばらくゼロ%固定を続けるのか、という点だ。

一部の市場関係者からは「過度に円安が進行すれば、輸入物価の上昇を通じたコストアップがクローズアップされるのは間違いない。今の日本経済にそれを許容できる耐性はない」とし、政治的な面からも長期金利の維持が難しくなる可能性があるとの見通しが出ている。

<日米長期金利上昇、金融庁が緊急調査>

さらに日米での長期金利の急上昇が、国内銀の保有する国債に含み損を発生させ、財務に打撃を与える事態も想定すべきシナリオとして浮上してきた。

すでに金融庁は国内銀行を対象に、金利リスクの管理体制について緊急調査に乗り出した。[nL4N1EA4R9]

先の国内銀関係者は、米長期金利の上昇が継続する中で、日銀が断固としてゼロ%固定を継続すれば、想定を超える円安が到来する可能性があると予測。過度の円安が「望ましくない」と判断して、ゼロ%固定を外せば、金利上昇を容認したことになり「市場は引き締めとみるだろう」と話す。

西村康稔・自民党総裁特別補佐は15日、ロイターとのインタビューで、円安は日本経済にプラスとの見解を示したうえで、日銀の金融政策について「米国の状況がこれだけ変わってきているので、政策判断に影響を与えると思う」と語った。

世界で初めて採用したYCC政策は、トランプノミクスという「巨大な変数」の前に、その真価を問われようとしている。

*見出しを修正しました。

(伊藤純夫 竹本能文 取材協力:木原麗花 編集:田巻一彦)

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