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焦点:日銀が物価見通し引き上げ視野、内需堅調にトランプ効果

2016年12月20日

[東京 20日 ロイター] - 黒田東彦日銀総裁は20日の会見で、国内景気について強気の見方を示した。

トランプ次期米大統領の政策期待に端を発した円安・株高の「追い風」は受けているものの、海外経済や個人消費の持ち直しにより、潜在成長率を上回る成長が続いていると分析。2%の物価目標に向け、長期金利ゼロ%の目標維持を強く表明した。円安・株高の基調に変化がなければ、次回1月の会合で成長率、物価の見通しを引き上げる可能性も出てきた。

<輸出・生産持ち直し鮮明>

20日の会見で目立ったのは、黒田総裁の強気の景気認識。記者団からは、相次いで最近の円安・株高の日本経済に対する好影響について質問が出たが、1)米国を初め先進国の経済が順調に推移し、新興国の景気減速感が和らいでいる。2)海外経済の改善を受け、横ばい圏内だった輸出・生産に持ち直しの動きがはっきり出てきた。3)個人消費も年前半には一部弱さがあったが、このところ持ち直しを示唆する指標が出ている──と指摘。

一方、トランプ効果については「政策がどのようになるかは、まだこれからのことなので、何とも申し上げかねる」「マーケットは米国が新しい政権の下、減税、インフラ投資など積極的な政策を行うとの期待あり、米国で株が上昇、金利が上昇、ドル高になっており、それが一定の影響をもってくる可能性は十分ある」と述べたが、今回の景気判断引き上げの要因は、あくまで3つの要因に起因していると説明した。

<為替は2月の水準と指摘>

また、黒田総裁は現在の為替について「円安というよりドル高」との認識を示したうえで、「今の時点で、円安が行き過ぎて問題になるという見通しは持っていない。今年2月くらいの水準であり、驚くような水準ではない」と述べた。

さらに長期金利の操作目標についても「2%の物価目標までは、まだまだ遠い」とし、「今からそういう具体的な議論をするのは時期尚早と思っている」と語った。この発言を受け、ドル/円<JPY=EBS>は一時、欧州市場の取引時間帯に118円台へ上昇した。

黒田総裁の指摘のとおり、生産・輸出が持ち直し、個人消費にも手応えが出てきた中で、さらに円安・株高が進めば、企業の投資心理が好転するとともに、輸出企業を中心に増益基調の企業が増え、今は慎重な見方を示す企業が多い来年の春闘でも、賃上げ促す方向に作用する可能性がある。

日銀が14日に発表した12月日銀短観では、大企業・製造業が想定する為替レートは1ドル105円程度。足元の為替相場からは10円以上の円高水準となっている。

黒田総裁も「春闘を通じて賃金が上昇していくことは家計の実感をより確かにし、消費がさらにしっかりしてくると思うので、その点では期待をもって春闘を注目している」と指摘した。

<長期金利ゼロ%目標、引き上げ考えず>

一方、米長期金利の上昇で、日本の長期金利にも上昇圧力がかかり、市場の一部では、いずれ長期金利のゼロ%目標を引き上げるのではないかとの観測も出ているが、黒田総裁は「われわれはイールドカーブコントロールという形で、適切な2%の物価安定のモメンタムのために適切なイールドカーブを促すためにやっている。海外金利が上昇するのに応じて、当方の目標を引き上げたり、長期金利も上昇していいとは全く考えてない」と断言した。

このまま米長期金利の上昇基調が継続すれば、日銀がゼロ%で固定する方針を明確にしたことで、一段と円安方向への取引が加速するのではないかとの観測が市場の一部で早くも浮上している。

円安が一段と進展すれば、株高を伴ってプラス方向の回転が増幅される公算が大きくなる。

その結果、需給ギャップはプラス方向への力が後押しされ、物価押し上げにつながっていく。

日銀の試算では、10%の円安が1年で0.3ポイント前後、1年半で0.45ポイント前後、2年で0.4ポイント前後、生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価を押し上げる。

こうした基調が鮮明になれば、これまで想定してきた成長率や物価の見通しが、上振れ方向に修正される可能性が出てくる。

黒田総裁は、経済・物価の先行きについて「今後の金融市場の動きを踏まえ、次回の会合で十分議論することになる」と表明した。

次回の1月末の金融政策決定会合で示す「展望リポート」では、経済・物価シナリオの上振れが議論になる可能性が高まっている。

(伊藤純夫 編集:田巻一彦)

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