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焦点:「静かな嵐」が突発的に発生、来年の金融市場も逆説的か

2016年12月23日

[ロンドン 21日 ロイター] - 市場の変動率を示す指標は低いが、米国株は最高値を更新、そして時折、株価や為替が瞬時に急落(フラッシュクラッシュ)する──。今年の金融市場はこんな逆説的な展開だった。来年も、表面上は静かだが定期的に嵐に見舞われる展開が続きそうだ。

背景には、アルゴリズム取引とパッシブ(受動的)投資の拡大に加え、極度な投機的ポジションの積み上がりといった要因がある。

将来のボラティリティー(変動率)を占う伝統的な指標、VIX指数は現在、極めて安定しているように見える。しかし、その背後には個別銘柄や通貨の「地雷」が隠れている。米国が利上げを進め、他の主要中央銀行が量的緩和を縮小するなら、時折起こる小さな嵐が増幅されかねない。

国際決済銀行(BIS)幹部らによると、VIXはもはや投資家心理とリスク許容度の物差しとして盤石ではなくなっており、ドルにその座を譲った。幹部らはまた、一時的なボラティリティーの急上昇が頻発しやすくなるとみている。

<大口でお願い>

問題の一因は、大手銀行や投資ファンドが行うアルゴリズム取引が市場を動かすようになったことにある。多くの取引が同じ「買いシグナル」や「売りシグナル」に反応するため、値幅が増幅される。

10月7日のポンドが急落したフラッシュクラッシュも、こうした取引が引き金だったとされる。

UBSの市場構造・流動性戦略グローバル責任者、ブラド・カーンドロス氏は「市場の透明化、自動化が進んでいる。つまり何かが起こった時、一つ目の要素として誰もがそれを知るということ、2つ目は、瞬時に事が起こる傾向があるということだ」と語る。

株式市場では、従来のアクティブ運用ファンドよりもコストがずっと低いETF(上場投資信託)の利用急増によって、取引の様子ががらりと変わった。

UBSの推計によると、米国の各証券取引所では、1日平均出来高の約10%が現在、引け段階に集中している。ETFの価格が引け値と連動しているためで、この割合は数年前のほぼ2倍に高まっている。

大口取引を手掛ける機関投資家は、商いが薄い日中に既存取引所で売買するのを敬遠するようになっている。

UBSのカーンドロス氏は、ブローカーが取引所を通さず内々に顧客の注文を取り次いでいると説明。「『大口でお願い』というのが顧客の決まり文句だ」と語る。

JPモルガンの金利取引共同責任者、チャーリー・ブリストウ氏も「従来より金額が大きく、素早く、大口の取引が増えている。売買注文の量が最高から最低に転じるスピードの速さは、今まで見たことのない現象だ」と言う。

こうした結果、短時間に多額の取引が集中し、大手投資家が留守の時間に相場が突如として大きく振れるという、自己実現的な循環が生み出されている。

<3兆ドルの地殻変動>

今年は英国の欧州連合(EU)離脱問題や米大統領選でのトランプ氏勝利で市場が急変動したが、来年もリスクイベントには事欠かない。

ドイツとフランスで予定される国政選挙では、ともに極右政党の台頭が予想されている。

米連邦準備理事会(FRB)が利上げを続けると予想されているだけに、トランプ次期政権がどんな政策を行うかが見えないことは、二重に不安だ。

ドイツ銀行によると、トランプ氏の勝利以来、世界の株式時価総額は3兆ドル増え、債券時価総額が同じ分だけ減った。

市場全体のボラティリティーは下がっているように見えるが、あらゆる要因を総合すると、市場の脆弱性は高まっている。

金利の上昇、金融政策から財政政策への軸足移動、政治情勢の変化。どれを取っても2008年以降続いてきた金融市場の景色は一変しそうで、市場参加者も大きな姿勢転換を迫られそうだ。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのアナリスト陣は「ボラティリティーを中央銀行の箱の中に押し込めることはもうできない」と指摘している。

(Jamie McGeever、Vikram Subhedar記者)

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