10月に厚生労働省が出した「受動喫煙防止の強化案」が大論争を巻き起こしている。情報戦を丹念に読み解くと、これは、受動喫煙対策という「原則論」からではなく、IOCとWHOという2つの国際機関に日本政府が屈したから、という構図が見て取れる。(ノンフィクションライター 窪田順生)

厚労省案に猛反発する
飲食業界とパチンコ業界

 2017年は日本中で「たばこ」をめぐる情報戦が激化していきそうだ。

 既に論争になっているように、厚生労働省の受動喫煙防止対策強化検討チーム・ワーキンググループが10月、ホテルや飲食店などのサービス業などについて建物内は原則禁煙とし、壁などで完全に仕切られた「喫煙室」を設置した場合に限って喫煙を認めるという「受動喫煙防止の強化案(たたき台)」を示した。

受動喫煙対策、中露も屈した「五輪前国際圧力」に日本も無力長年、日本医師会が訴えてきても微動だにしなかった受動喫煙対策強化が、ここにきて大きく動き始めた。背景には、国際社会においてゴーイングマイウェイを貫く、あの中国とロシアも屈したIOCとWHOによる“国際圧力”がある

 これに真っ向から反対しているのが飲食店・パチンコ業界の方たちだ。

 小規模な事業者はスペースや資金面から「喫煙室」などつくれない。さりとて、「タバコは外でお願いします」なんてことを言ったら、客足が遠のいてしまうというのだ。

 また、パチンコの場合、施設利用者の喫煙率が43%と圧倒的に高いことに加え、業態的に風営法に基づき、所轄警察から厳密に管理をされるため、喫煙室設置の改装をするとなると、許認可の手続きで営業を停止しなくてはいけない。商売あがったりだというのだ。

 もちろん、ただ反対しているだけではない。厚労省案へのカウンターとして、「反対」姿勢を鮮明にしている産経新聞の記事内で「民業圧迫」の世論ムードの形成に余念がない。

「店を潰す気か!」(産経ニュース12月1日)
「完全禁煙にすることで小規模店はつぶれて家族が路頭に迷う」(SankeiBiz12月17日)

 しかし、喫煙者が「大事なお客様」という業界には気の毒だが、この厚労省案に多少の譲歩はあっても、方針が大きく覆ることはないと個人的には見ている。