NECとのパートナーシップに
活路を見出す

 こうして始まった今回のプロジェクトだが、早々に大きな壁に突き当たった。同社が求めるような単品通販会社向けのソリューションが、市場に存在しなかったからだ。

 「確かにITベンダー各社からは、通販会社向けのさまざまなソリューションが提供されています。しかしその内容を見ると、当社が期待するものからはほど遠い。ITベンダーは、単品通販会社の業務を実際に行っているわけではないので、われわれが本当に必要な機能や情報が入っていなかった」と矢頭氏は指摘する。

 その1例が、販促施策のためのテストを繰り返し行う機能だ。「例えば当社では、上半期だけでも約200種類のチラシを制作しました。このチラシを、新聞への折込みや、お客さまへの商品に同梱し発送を行いますが、チラシの種類の組み合わせやデザインによって通販の売上に変化が出ます。チラシ毎に何パターンもの候補から、最も効果のありそうなものを選びますが、私自身、この仕事を17年以上やっていても読みを外すケースがある。お客さまの心に響くマーケティングを行うには、結局どのチラシが最も効果が高いか、何度もテストを繰り返すしかない。ところが市販のソリューションでは、こうしたことが十分に考慮されていなかったのです」と矢頭氏は述べる。

 事業規模が20億円くらいまでなら、何とか対応のしようもあるが、より強力な顧客管理機能やセキュリティ機能が求められる30億円以上の規模になると、実務に耐えられるソリューションがないのが実情だったという。

 このような状況を背景に、同社では単品通販会社にとって最適なCRMシステムを自ら構築することを決断。ただし、ゼロから独自開発するのではなく、コンポーネントを組み合わせて構築する手法を選んだ。「スーツでも一番格好良く見えるのは、実はフルオーダーではなくイージーオーダー。統計学的に最もバランスの良いスタイルで作られていますから、これに身体を合わせた方がシャープに見える。システムにもこれと同じことが言えます」と矢頭氏はその理由を説明する。独自のノウハウを入れカスタマイズしつつ、コンポーネントの組合せでスピードやバランス(標準)を重視する。環境の変化に機敏に対応しなければならないシステムだからこそ、こうしたアプローチが求められると言えるだろう。