ただし、次に大きな問題となったのが、システムを共同開発するパートナー選びだ。「今回のプロジェクトでは、単品通販のスタンダードと呼べるようなシステムを実現したかった。しかし、それを実現するには数多くの困難や技術的な壁を乗り越える必要があります。それでも賛同してくれるパートナーが現れるかどうか、これが今回の最大の懸念点でした」と矢頭氏は振り返る。

 こうした同社の期待に応えたのがNECだ。「NECはさまざまな業種の経験を持つSEメンバーが多数在籍していた上に、われわれとも共通言語で会話できた。またわれわれの想いを受け止め、そのためのプロジェクト体制を構築し、強い意気込みで臨んでくれた点も大きな決め手になりました」と矢頭氏は話す。

少人数で効率的に業務を回せる
仕組みを実現

 今回の新システムのベースには、NECの「NeoSarf/DM」のフレームワークを採用。さまざまな機能を組み合わせて実装することで、高い柔軟性と拡張性を備えたシステム環境を実現している。また、従来はオンプレミス(on-premise・自社運用)で構築していたシステム基盤も「NEC Cloud IaaS」でクラウド化し、環境変化への即応とBCP対策の強化を図っている。

 「現場の力を最大限に発揮させるためには、例えITに詳しくないオペレーターでも、ボタン1つで必要な情報を取り出せるようでなくてはなりません。そこで今回は使い勝手も徹底的に追求し、直感的な操作が行えるようにしています」と矢頭氏は説明する。この結果、よりタイムリーできめ細かな販促施策を展開することが可能になった。さらに、操作がシンプルになり、新たな顧客ニーズに対応するためのシステム変更にかかる時間も、以前の数日から1~2時間へと劇的にスピードアップされている。

 さらに見逃せないのが、企業経営面での効果である。

 「システム活用の最大の利点は、少人数で業務を回せるという点にあります。人が少なければマネジメントの負担も減りますし、人件費の面でもメリットは大きい。例えば当社単体の社員数は、売上規模が同等の企業の約1/3程度ですが、これもシステムをうまく使いこなすことを考えてきたから。今回の新システムでは、現状の1.5倍程度の人員で、2~3倍の売上に対応することを狙っています」と矢頭氏は語る。高収益で筋肉質な企業体質を作り上げていく上でも、新システムが大きく貢献しているのである。

 「お客さまに喜んでいただけるアイデアを生み出すことがわれわれの仕事。今後もお客さま視点でのマーケティングにこだわり、新たな商品やサービスをご提供していきたい」と力強く話す矢頭氏。今回作り上げた通販システムがその取り組みを下支えしていくことになるだろう。

「NeoSarf/DM」を利用することで、単品通販のノウハウを盛り込むことに成功。
システムは「NEC Cloud IaaS」上で構築し、高い信頼性・安定性と事業継続性を確保している