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市場は「嵐の前の静けさ」か、不確実な時代の強い楽観

2016年12月28日

[東京 28日 ロイター] - トランプラリーが一服し、マーケットは静かな年の瀬を迎えている。クリスマス休暇から戻っていない投資家も多く、各市場とも商いは薄く動意も乏しい。だが、世界の不確実性はかつてなく高く、その一方で市場の楽観度は極めて強い。「嵐の前の静けさ」なのか──。期待と不安が交錯する2017年を迎えようとしている。

<コールよりプットが高い時代>

 「Economic Policy Uncertainty Index(経済政策不確実性指数、EPU指数)」が市場関係者の注目を集めている。米国の大学教授らが開発した数値で、主要新聞の経済政策の不確実性に関する記事の数やエコノミストによる経済予想のばらつきなどから、経済政策の不確実性を数値化した指数だ。

未来は不確実なものであるとはいえ、直近11月のグローバルEPU指数は281ポイントと、1997年の統計開始以来の最高を記録。リーマン・ショックにつながるサブプライム問題が起きていた2008年10月当時でさえ、200ポイント程度であり、足元の不確実性は突出して高い。

高い不確実性の要因は、トランプ次期米大統領の不透明な政策実現性だけではない。「ブレグジットや、トランプ氏勝利で示されたのは、エスタブリッシュメントが作ってきた既存の体制への不満や反動だ。世界のレジームが変わろうとしていることが、不確実性を高めている」とフコクしんらい生命保険・財務部長、林宏明氏は話す。

米国、ロシア、中国のパワーバランスが揺らぎ始め、来年のフランスやドイツの選挙には不透明感が強い。極右政党が躍進すれば、政策の行方はますます読めなくなる。中東などの地政学リスクもくすぶったままだ。

不確実性はリスクとは異なる。リスクは統計や経験に基づいて定量化や値付けができるが、不確実な事象は突然起きるため対処が難しい。「政治が予見できなくなった以上、ダウンサイドのヘッジポジションが重要になる。コールよりプットの価格が高い時代が続きそうだ」と、BNPパリバ証券・グローバルマーケット統括本部長の岡澤恭弥氏はみる。

<不確実性指数と恐怖指数の高い相関>

しかし、不確実な時代に反するように、市場は楽観度を強めている。ウェルズ・ファーゴ/ギャラップの調査では、投資家の楽観度は過去9年間で最高水準を記録。「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数<.VIX>も11ポイント台と歴史的にみて低水準だ。

こうした楽観を映し、主要国の株価指数は高水準で推移。「トランプラリー」は一服しているものの、ダウ<.DJI>は史上初めて2万ドルに接近。予想株価収益率(PER)は20倍となっている。日経平均<.N225>も年初来高値を更新、2万円大台を視界にとらえている。

市場に安心感をもたらしている理由の1つが、財政拡張政策だ。米国だけでなく、各国とも歳出拡大に動き出しており、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの推計では、2016年と17年の日本、カナダ、韓国、欧州、米国における財政拡張策は、合計で1兆ドル以上の規模に達する。

ただ、「トランプ氏の財政拡張政策が、米国の潜在成長率を高めるのは難しい」(JPモルガン証券・シニアエコノミストの足立正道氏)との声は多い。

 「財政政策が企業の前向きな設備投資に結びついたり、的確な規制緩和が行われれば、政策不確実性はポジティブな方向に顕在化する可能性もある」(シティグループ証券チーフエコノミストの村嶋帰一氏)。だが、バラマキであったり、中途半端な規制緩和に終われば、期待は失望に変わる。

長期的な相関性で見れば、高い不確実性指数と、低いVIX指数は両立しないとeワラント証券の投資情報室長、小野田慎氏は指摘する。不確実性指数が高まるとVIX指数も上昇する傾向があり、さらにVIX指数が大きく上昇すれば、株価(日経平均)は下落する相関性がみとめられるという。「いまの低いVIX指数は、経済政策の不確実性を織り込んでいない可能性がある」と小野田氏はみている。

<脚光浴びる日本政治の安定性>

世界的な不確実性が高まる中で、脚光を浴びているのが、日本の政治の安定性だ。衆院解散・総選挙がいつになるかという不透明要素はあるものの、野党の勢いが弱いだけに波乱を予想する市場関係者は少ない。

 「今秋以降、海外勢が日本株を買っている理由は、円安による業績改善期待と政権の安定性。米国や欧州の政治が不安定化するなか、日本の政策が最も見通しやすいと評価されている」と、最近、海外投資家を訪問した外資系金融機関の運用担当者やエコノミストは、口をそろえる。

しかし、「アベノミクス政策を話題にしなくなった」というのも、海外投資家に共通した傾向だという。金融緩和策の限界が意識されてきていることや「第3の矢」である成長戦略の失望というのが共通した理由だ。日本株買いは、日本経済や日本企業の魅力が高まってきたというよりも、相対的・消去法的な選択に過ぎない。

黒田東彦日銀総裁は26日、経団連の審議員会で講演し、世界経済はリーマン・ショック後の調整局面を脱し、日本経済や企業経営にグローバルな「追い風」が吹きつつあるとの認識を示した。

しかし、海外からの「追い風」は、すぐに風向きを変えるおそれもある。米国の保護主義政策や、欧州選挙の波乱など不確実性が顕在化すれば、リスクオフの円高が再開しかねない。日本自らのモメンタムが弱まっているなかでは、来年も「逆風」には警戒が必要だろう。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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