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アングル:2017年の顔、難題山積する欧州が注目すべき10人

2016年12月29日

Alastair Macdonald

[ブリュッセル 22日] - 欧州連合(EU)は内憂外患を抱えた状態で2017年を迎える。領域の東方、西方、南方において幅広い問題を抱える一方で、欧州大陸全域でも反EUを掲げるナショナリストが台頭している。

2017年に欧州が注目する10人の人物は以下の通り。

●ドナルド・トランプ次期米大統領

ドナルド・トランプ氏の大統領選における勝利は、ただでさえEU離脱を決めた英国民投票にショックを受けていた欧州の人々をさらに驚かせ、反主流派であるEU懐疑派を勢いづかせた。

1月20日に就任するトランプ次期大統領が、選挙公約を反映した政策を実行するかどうかで、欧州は大きな影響を受けるだろう。経済低迷が政治の不安定要因となっているEUでは、米財政支出の大幅拡大によって景気が上向く可能性がある。だだし、通商政策におけるトランプ氏の保護主義的スタンスは逆の影響をもたらすリスクもある。

トランプ氏は北大西洋条約機構(NATO)への資金提供について不透明な見解を持っており、またロシアとの関係改善を呼びかけていることから、EUは自立的な防衛オプションを模索している。

●ポーランド与党「法と正義(PiS)」のヤロスワフ・カチンスキ党首

憲法裁判所の権限を制約することでEU中枢に挑戦したポーランドの右派政権は、EUがその方針を加盟国にどれだけ強制できるのか探るとともに、東西の亀裂を広げつつある。EUは2月末までに方針を変えるようポーランド政府に求めているが、カチンスキ党首は、同国に対する罰則適用について、ハンガリーのオルバン首相などの盟友が拒否権を行使してくれるものと期待している。

ポーランドは旧共産圏に属する東欧諸国を代表する大国だ。英国の外交当局者はEU離脱交渉において東西の亀裂を利用する構えを見せている。ロシア政府は、旧ソ連同盟国を厚遇しているものの、カチンスキ氏は扱いにくい相手だ。2010年にロシアで起きた航空機墜落事故でカチンスキ氏の一卵性双生児の弟で、当時のポーランド大統領だったレフ・カチンスキ氏が亡くなっているが、この事故にロシア政府が絡んでいると見ているからだ。

●オランダ極右政党「自由党」のヘルト・ウィルダース党首

世論調査では、反イスラムを掲げる自由党がオランダ議会で最大勢力を占める勢いだが、有権者がこの調査結果を実際の選挙で裏付けるとすれば、欧州の「選挙の年」の方向が定まる可能性がある。

複数政党による連立政権となるため、ウィルダース氏が支配者になるわけではないが、彼が大勝すれば、その後に予定するフランス、ドイツの選挙においても、極右への投票が視野に入ってくるかもしれない。

EU創設国の1つが、EU離脱を望むこの人物をどう対処するか、その様子を欧州は目の当たりにすることになる。主流派路線を堅持してウィルダース氏を権力から排除し、その一匹狼としての魅力を高めるのか。それとも、権力に取り込むことで、彼の過激な主張を政治の現実で丸め込んでしまうのだろうか。

●メイ英首相

 「ブレグジットとはブレグジット(英国のEU離脱)という意味だ」──。正式離脱に向けた2年間のカウントダウンを開始する書簡を3月末までにEU本部に送ることによって、メイ首相は自身のキャッチフレーズに向けて一歩踏み出す。

ポーカーフェイスを維持しつつ、自らの政権と、分裂の危機がささやかれるほど亀裂の広がる国家をまとめていかなければならない。そして、欧州側との離脱交渉が待っている。英国側に有利な条件となれば、後に続く誘惑に駆られかねない加盟国は多く、EU側は少しでも譲歩すれば新たな脱退の動きを促しかねないと恐れている。

●フランス極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン党首

反EU派のルペン党首が、5月7日に予定する2回目の選挙でフランス大統領の座を獲得すれば、上記の展望にも意味はなくなるだろう。候補が乱立しているため、4月23日の第1回投票で同党首が勝利することはほぼ確実だが、2002年に父親が成し遂げられなかった過半数獲得に届くかどうかは疑問視する声が多い。

だが、ブレグジットとトランプ氏当選があっただけに、誰も世論調査を信じていない。48歳のルペン氏は、露骨な人種差別と反ユダヤ主義を掲げた父親には決して投票しなかった何百万人もの有権者の支持を勝ち得ている。大きな問題は、決選投票の相手が誰になるかだ。

EU創設国フランスで同氏が大統領になれば、EUは、いや少なくとも私たちが知るEUは、終わってしまうかもしれない。

●アフリカ移民

アフリカ西部出身の23歳の若者は、冬の嵐が収まったらイタリアに渡航したいと考えている。だが、EUは援助予算をちらつかせて彼の出身国の政府に難民対策を強要し、リビア近海の哨戒を強化して難民の大量流出に備えている。ギリシャからシリア難民を押し戻すことに成功した戦術を再現し、難民たちのリスク対効果の計算を変えていこうという狙いだ。抑留されて本国に送還されるだけなら、サハラ砂漠と地中海という難関にあえて挑戦する意味があるだろうか、と。

●ロシアのプーチン大統領

ロシアの指導者であるプーチン大統領は、自国の世界的影響力を回復するため、難解な戦術的ゲームを仕掛けている。プーチン大統領は、天然ガス供給の調整から対立勢力への支援に至るまで、多くの方法を用いて、西側の近隣諸国に対して友好的にも、敵対的にもなることができる。2014年のクリミア併合以来、EUには、プーチン大統領の次の一手を自信を持って予想しようとする者はほとんどいない。

EU各国首脳は、ロシアに対する制裁を継続するかどうかを7月末までに選択しなければならない。ウクライナに対するプーチン大統領の強硬姿勢を崩すことを目的とする制裁だが、EU加盟国の一部には不満もある。トランプ次期政権が米国による制裁を解除して共同歩調を乱せば、EUにおいても、制裁継続を阻もうとする加盟国の出現を防ぐために苦労を強いられるだろう。

●イタリアのマッタレッラ大統領

抜け目のないシチリア島出身の弁護士だった75歳のマッタレッラ大統領は、マフィアによって兄を暗殺された後、政治の世界に入った。「台風の目」とも言うべき存在である。対立する諸政党が、今後変更される可能性のある制度の下で、いつ行われるかも分からない選挙に備えるなかで、マッタレッラ大統領は、彼らをうまくなだめすかして統治に当たらなければならない。

ユーロ加盟国は、巨額の財政赤字を抱えるイタリアと、経営難に陥った同国の銀行業界を懸念しつつ見守っている。ギリシャやポルトガルとは異なり、イタリアは破綻させるにも救済するにも規模が大きすぎるのだ。

●ドイツのメルケル首相

9月に行われるドイツ総選挙で4期目をめざす62歳のメルケル首相は、欧州の指導者中の指導者だが、昨年以降、百万人もの難民を受け入れたことによる国民の怒りと不安に脅かされている。メルケル首相より右派に属するユーロ懐疑派が初議席を獲得する見込みであり、少なくとも、同首相の連立工作を複雑なものにするだろう。

ベルリンの壁崩壊による混乱の後、安定した欧州のカギとなるEUに対して、ドイツが長年にわたり力を注ぐよう保証してきたのは、東ドイツ出身の物理学者であるメルケル氏だ。しかし、もし近隣諸国が落伍し始めたとしたら、それでも彼女は奇跡を生み出せるのだろうか。

●「マン・イン・ブラック(黒衣の男)」

この男は自分が住む欧州を憎むようになった。シリアとイラクで追い込まれた過激派組織「イスラム国」は、彼の怒りに火を付け、どのような手段であれ、行動を起こすよう促している。

さらに広い意味では、この男はすべての未知の存在、そして人為的であれ自然現象であれ、前例なき予期せぬ出来事の象徴である。それは、世論の一時的な動揺を引き起こし、新しい年に向けた欧州の計画や優先課題を脱線させかねない。

(翻訳:エァクレーレン)

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