ある程度以上の経験年数を経ている先輩であれば、多くの業務は深く考えることなく自動的に遂行できるものです(業種、職種にもよりますが)。また、例外事項に対応するだけの能力も身についているでしょう(うまく対応できないこともないとは言えませんが)。

 しかし、新入社員は、そうはいきません。ひとつひとつの業務に考えながら取り組まなければ仕事は終わりません。考えながら取り組むひとつひとつの作業の積み重ねが、能力につながっていくわけです。

 ここで大切なのが、業務に対する振り返り=内省というプロセスです。

若手自身の自助努力に加えて必要な<br />「マネジャーのサポート力」と「組織の関与力」

 これまでの研究によれば、成人の能力開発の70%以上は仕事上の経験によることがわかっています。仕事上の経験を学習=能力開発につなげるためには、業務をやりっぱなしにするのではなく、振り返り=内省によって、新しい状況(次の業務)に対処するためのセオリーを形成することが有効です。

 このプロセスを、経験学習サイクルと呼びます。

 OJTをうまく機能させて、能力向上に結び付けていくためにマネジャーや上位者、メンターなどが留意するべきなのは、経験学習を回していくために内省を支援することです。

 若手がひとつの業務を終えたところで対話をし、振り返りを促すことがきわめて有効です。うまく行ったのはどういう点か、反省点はなんだったか。そんな問いかけを深めていくことによって、若手は多くの気づきを得て、次の仕事に活かせる知恵を身につけるでしょう。