つい最近まで比較的安定していた
世界経済に、何が起きているのか?

 つい最近まで、世界の経済状況は比較的安定していた。中国など主要新興国の経済が堅調に推移していることに加えて、欧米など先進国の経済も、予想以上に回復基調の歩みを示したためだ。

それに伴って、世界景気に対して楽観的な見方が有力になり、株式や為替などの金融市場も安定した展開を示してきた。

 ところがここへ来て、世界経済が抱えるリスク・ファクターの顕在化が続いている。チュニジアに端を発したアラブ諸国の政治的混乱は、エジプトやリビア、さらにはバーレーンやイエメンなどにも広がっている。

 今後、こうした動きがさらに拡大するようだと、エネルギー価格の高騰などの経路を通じて、世界経済にも大きなマイナスの影響を与えることが懸念される。

 アラブ諸国の政治情勢以外にも、世界的なインフレ懸念の台頭や一部欧州諸国のソブリン・リスクなど、無視できないリスク・ファクターは多い。

 経済専門家の中には、特にソブリン・リスクを懸念する見方が多い。今後、それらのリスク・ファクターの現実味が高まると、景気の先行きに不透明感が漂い始めることになる。当分、重要なリスク・ファクターから目が離せない。

 足もとで起きているエジプトやリビアなどアラブ諸国の政治的な混乱は、高い失業率と食料品価格の高騰による民衆の苦しみがきっかけだった。

 アラブ諸国の中では、チュニジアやエジプトは相対的に工業化が遅れていることもあり、失業率が高い。働く場に恵まれない人々にとって、食料の価格高騰は直接生活に響く大切な要素だ。