強いリーダーシップ・パイプライン(体系的なリーダー育成の連鎖)と高業績の両方を実現している企業には、5つの特性がある。本記事では、既存のリーダー育成ツールに頼らない方法が示される。


 従来型のリーダーシップ育成ツールに対する企業の投資は、的外れで金の無駄遣いであることが多い。

 これはリーダーシップの育成そのものが重要ではない、という意味ではない。2016年、デロイトが130ヵ国7000社を対象に実施した調査によると、企業幹部の89%は「リーダーシップ・パイプラインの強化」を喫緊の課題と見なしている。前年の86%から上昇しているが、この傾向には納得がいく。企業は人材を継続的に管理職へと昇格させており、新任リーダーは役割の継承に苦労するものだ。

 新しいリーダー職に就く人々をサポートすべく、米国企業は年間でおよそ140億ドルも費やしている。その対象には、講座、書籍、ビデオ、コーチング、テスト、幹部教育プログラムなどがある。そして、その投資額は、2015年には前年から10%増加している。

 ところが、こうした取り組みの大部分について、役に立っているという証拠はほとんど見られない。ハーバード大学のバーバラ・ケラーマン(『ハーバード大学特別講義 リーダーシップが滅ぶ時代』の著者)、スタンフォード大学のジェフリー・フェファー(『悪いヤツほど出世する』の著者)をはじめ、多くの専門家はこう指摘する。人材育成市場は一時の流行りものであふれ返っている。聞こえのよい行動モデルや、楽しくて興味深いツールの数々は、大した効果をもたらさない、と。

 たとえば、昨今の重要なテーマといえば「デジタル・リーダーシップ」だ。既存のビジネスに破壊や変革をもたらすデジタル戦略を立案し、組織をよりイノベーティブかつ反復的、協業的になるよう導くリーダーシップである。

 デロイトとマサチューセッツ工科大学の共同調査によると、企業幹部の90%は、自社の「デジタル化」のスピードは不十分だと見なしている。そして70%が、自身はその改革を牽引するスキルを持ち合わせていないと考えている。彼らはその能力を培う術を探し求める過程で、流行りものが蔓延するリーダーシップ育成市場を肥え太らせているのだ。

 こうした幹部たちは、焦点を変えるべきである。その理由を説明するにあたり、私がデロイトで同僚と共に仕上げたばかりの調査結果を紹介しよう(英語サイト)。

 我々は世界各地の2000社以上の幹部にアンケートとインタビューを行い、リーダーの育成方法、マネジメント体制、業務の連携方法、企業文化のあり方など、広範にわたる質問をした。そして、そのデータを財務およびリーダーシップのさまざまな指標と照合し、対象企業を4つのグループに分類した。

 他の同類の調査とは異なり、我々が検証したのはリーダーシップ育成そのものではない。さまざまなマネジメント慣行が、業績にどう影響しているかを分析した。

 その結果、強力なリーダーシップ・パイプラインと優れた業績を併せ持つ企業は、次の5つの要素を備えていることがわかった。