プロレスは「受け身」の芸術だと言われる。

 ボクシングであれば、「相手に打たせなかった」ことがその技量を明確に示す証明となり、賞賛を受ける。

 しかし、プロレスは違う。

 相手の得意技を受けて、それでもなおかつ意識を失わず、最後の最後で自分の得意技を決める。これが、最高の勝ちパターンである。

 つまるところ最強のプロレスラーとは、相手を輝かせ、自分も輝くスーパースター。

 人生において、プロレスの精神から学べることはじつに多いのだ。

怒り、欲望、友情、正義、お笑い…
人生のすべてが詰ったプロレスの魅力

「このあいだ膝の治療に行ったら、お医者さんに70歳の膝をしているねって言われました。左膝の前十字靱帯、断裂しているんです」

 そんなのはまだまだ甘っちょろいらしく、最もきつかったのは腰のヘルニアを患った時だという。

「あれはもう、ほんとやばいっす。ズキンズキンした痛みが耐えず腰を襲ってきて、足はしびれるし、痛くて眠れないし……。考え事もできなくて、ほんと、もう、生きているのがつらかったっす」

 満身創痍状態なのは、プロレスラーのダイスケさん(27歳)だ。まだ大学3年生だった2004年12月、学生プロレス出身の「ガッツ石島」さんとともに、「ガッツワールドプロレスリング」を立ち上げた。プロレスラー歴6年の若手である。

「なぜ、あえてプロレスをやろうと?」

「最初のきっかけは、高校2年生の時でした。友だちに、プロレス好きのやつがいたんです。で、おもしろいから見てみろよと言われて。その頃というのは、プロレスのテレビ放送はもうほとんどなくて、真夜中にかろうじてちょろっとやっていたくらい。だから、ジャイアント馬場とアントニオ猪木の名前くらいは知っていましたが、プロレスそのものはあまり見たことがなかった」

「最初に、生のプロレスを見たのはいつですか?」

「高校3年生の時です。地元商工会が開くイベントで、無料で観戦できるチャリティープロレスをやっていたんです。学校の校庭に櫓立てて、ちょうど盆踊り踊っているような場所で」

 盆踊りとプロレスとは、なかなか絶妙なマッチングである。

「プロレスの、何がそんなに魅力なんでしょうか?」