親の世代と子の世代
就活環境は大きく変わったが……

 みなさんの親の世代が就職活動をした時代とは、日本経済が置かれた環境から就活のルールまで、まったく変わってしまっています。高度成長と長引くデフレ、輸出産業中心から内需・サービスへの転換。メールやウェブを使う今と違って、当時は家庭の中にはファックスや留守番電話すらありません。

 なにしろ就活なんて言葉もありませんでした。会社訪問の解禁日は4年生の10月1日。この日の朝、どの企業の前に並ぶかが就活生の関心事であり、世の中は半ば季節のニュースとして学生の行列を見守っていました。

 ビジネス社会から離れて生きてきた専業主婦の母親ばかりでなく、ビジネスマンの父親だって自分の仕事や話題のニュースに関係ない業界のことは知らないものです。30年前の優良企業や人生観で就活がどうのこうのとくちばしを突っ込まれても、「分かってないなぁ」と面倒くさい気持ちになるのはだれも同じです。その点をしっかり押さえた上でという条件付きですが、それでも就活のことで親ともきちんと話をすることは決してムダではありません。

 自分が書いた記事を何年か経って読み返すと、ときたまゾッとすることがあります。中身は間違っていないのですが、記事が立脚している価値観がひっかかるのです。数年前であれば過剰なまでの市場原理への期待、そうした時代の流れに見事に乗っかってしまっている自分に気がつくのです。

 自分が世の中に流されているだけならいいのですが、記者の仕事は読者に自分の考えを示すのが仕事。不正確な事実を書いているわけではないのですが、結果的にせよ、無責任だったのではないか悩んでしまいます。