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焦点:トランプ氏の北朝鮮発言、一線を越えた可能性

2017年1月7日

David Brunnstrom and Arshad Mohammed

[ワシントン 3日 ロイター] - ドナルド・トランプ次期米大統領は今週、ツイッターへのわずか3語の投稿で、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験は起こらないと明言した。

北朝鮮は核武装も可能な状況だが、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は1日、北朝鮮はまもなく、いずれ米国を攻撃する能力も備える可能性のある兵器、ICBMの発射実験を行うと述べた。これに対しトランプ氏は、「そんなことは起こらない(It won’t happen!)」と書いた。

だが、発射実験の阻止は口で言うほど簡単ではない。そしてトランプ氏は、1月20日に大統領に就任した後、どうやって北朝鮮の核兵器開発計画を撤回させるのか、何も示唆していない。これは、民主党・共和党の別を問わず、歴代の米国政府が果たせなかった課題なのだ。

米国の元当局者やその他の専門家によれば、急速に拡大する北朝鮮の核兵器・ミサイル開発計画を抑制しようと試みるならば、米国として採りうるオプションは実質的に2つ、つまり交渉か軍事行動しかないという。

だが、どちらの道も確実な成功はおぼつかない。軍事的なオプションは、特に北朝鮮に近い米国の同盟国、日本と韓国にとって大きな危険を伴う。

共和党のトランプ次期大統領は、別のツイートで、北朝鮮にとって隣国であり、唯一の同盟国でもある中国が、北朝鮮政府の封じ込めに貢献していないと文句を言った。ただし、中国は、北朝鮮政府に対する数次にわたる国連制裁を支持している。

オバマ政権の関係者も含め、トランプ氏に批判的な人々の多くも、中国は北朝鮮に対してもっと厳しい圧力をかけられるという点ではトランプ氏に賛同するが、国務省は、中国が北朝鮮封じ込めに協力的でないというトランプ氏の評価には同意できないとしている。

専門家らは、通商問題から台湾問題に至るトランプ氏の対中強硬姿勢は、中国の協力を確保するうえで障害になりかねないと指摘する。

米シンクタンク、カーネギー国際平和財団で原子力政策プログラムの共同ディレクターを務めるジェームズ・アクトン氏によれば、ちょうどオバマ氏が2012年にシリア政府による化学兵器使用を批判したのと同じように、今回の北朝鮮に関するツイートによって、トランプ氏はいずれ自身の評価を左右するようなレッドライン(越えてはならない一線)を引いてしまった、という。

 「北朝鮮による核兵器・ミサイル開発計画の抑制が非常に難しいことを考えれば、今回、トランプ氏があのようなツイートを投稿したのは無謀だった。これが今後、トランプ氏にとって悩みの種になる可能性があると私は思う」とアクトン氏は語った。

<3つのオプション>

複数の米当局者が匿名で語ったところによれば、命令を受けた場合、米軍には北朝鮮のミサイル実験に対して3つのオプションがあるという。発射前の先制攻撃、飛行中のミサイル迎撃、そして発射実験を放置しておくことだ。

また、先制攻撃というオプションには、誤った目標を攻撃してしまう可能性や、東アジア地域の同盟国に対する北朝鮮の報復攻撃というリスクが伴うと、ある当局者は語った。

米モントレー国際問題研究所の軍事専門家ジェフリー・ルイス氏は、まぐれ当たりは別として、試射されたミサイルを米国のミサイル防衛システムで撃墜できるのか疑問であるとして、北朝鮮の核兵器・ミサイル開発計画の破壊は、大掛かりでリスクの高い試みとの見方を示した。

そうした取り組みには大規模な軍事作戦が必要で、かなりの期間がかかるだろうとルイス氏は述べた。

同氏の指摘によれば、北朝鮮の主な核兵器・ミサイル実験拠点は同国の東側・西側に分かれており、部品等を供給する工場も国内の複数の地方に分散している。

 「核開発拠点の地下にはトンネルが複雑に走っている。発射装置は可動式なので、国内のどこからでもICBMを発射することができる。北朝鮮に侵攻するほうがましだ」とルイス氏は言う。

共和党のコリー・ガードナー上院議員はCNNウェブサイトへの寄稿のなかで、北朝鮮の兵器開発計画を支える、多くは中国国内の企業や団体に対し、トランプ政権が「二次的な制裁」を科すことを期待していると書いている。

<制裁強化はあるか>

トランプ氏は北朝鮮に対する政策アプローチについて詳細を明らかにしていないが、政権移行チーム顧問の1人はロイターに対し、手持ちのオプションについて議論するならば、その大部分は、「ある期間にわたる厳しい制裁」に関するものでなければならないと考えていると語った。

国務省のカービー報道官は3日、米国は追加的制裁の可能性を排除していないとしつつ、「先走りしないようにしよう」とクギを刺した。

共和党のジョージ・W・ブッシュ前大統領の補佐官を務めたビクター・チャ氏は、トランプ氏が、米国本土を脅かすような核弾頭搭載可能なICBMを北朝鮮が保有することを真剣に阻止するつもりだとみている。

 「もちろん、阻止する方法は難しい。外交(開発凍結の要求)、制裁(中国によるもの、米財務省によるもの)、拡大抑止・攻撃オプション・統合ミサイル防衛のための東アジアへの米軍増派の組み合わせになるだろう。考えられるのはそういった手段だ」とチャ氏は言う。

米国務省出身で、マンスフィールド財団理事長のフランク・ジャヌージ氏によれば、今回のトランプ氏の声明は、オバマ政権の「北朝鮮の核兵器・ミサイル開発計画を容認しない」という公約同様に、中身のないものに終わる可能性があるという。

 「北朝鮮がその実質、つまり中身のない発言であることを察してしまい、いっそう増長する結果になるのではないかと懸念している」とジャヌージ氏は言う。「越えてはならない一線を引いてしまった。だが、それを裏付ける用意ができているようには見えない」

同氏は、北朝鮮が長期にわたって米国や国連による制裁に抵抗して核兵器・ミサイル開発計画を継続しているとして、次のように付け加えた。「ドナルド・トランプ氏が140字で発信するだけでそれが変わるとは考えにくい」

(翻訳:エァクレーレン)

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